2013年09月30日

ガラパゴス化した日本の換気表示‥‥ユウキ邸の報告書にショック!! (5)


今月の当初に、施主のユウキさんから、「ボードを張る前に、予備の気密測定を行います」 との案内をいただいていた。
いままで気密テストには、予備と完成時を含めて数百回以上立ち会ってきている。
現場の施工精度を見ていたので、直感でC値は0.3cu/u程度だろうと分かっていた。 しかし、安全度を考えて、「0.4cu/u程度の数値は出るでしょう」 と事前に話をした。
コーナー札幌のお馴染みの測定機で、気密サッシを納入したエクセルシャノンが実施するというのだから、任せておいて十分。ことさらテストに立ち会う必要はないと考えていた。
「テスト結果を報告していただくだけで十分です」 とメールし、ほとんど無視してきた。
そして、ユウキさんから、「何回かやったテスト結果で、隙間相当面積は0.2cu/u以下でした」 との報告があったので、連載3回目から 「Q値0.8W、C値0.2cu/uのユウキ邸」 に変更した。 

ご案内のように、何を根拠にしているのかが未だに分からないのだが、ドイツのパッシブハウス研究所は、「パッシブハウスと呼称出来る気密性能は、50パスカル時の漏気回数が0.6回転/時以上である‥‥」 と明言している。
カナダのR-2000住宅の気密性能は、50パスカル時で1.5回転であった。これには、「それぞれの風圧によって室内の空気質がどのように変化を受けるか」 という詳細なデータの裏付けを持っていた。
それが、いきなり2.5倍の気密性能アップをパッシブハウス研は求めてきた。 5年前にパッシブハウス研を訪れた時、博士にその根拠を質さなかったのは、明らかに私のミステーク。 そして、不勉強で申し訳ないが、漏気回数が何故0.6回転/時でならないかが不明のまま。
たしかに、排気部分だけで機械換気している第3種換気の場合は、気密性が悪いと排気機に近い部分からより大量に給気をするショートサーキット現象が起こり、遠隔にある部屋からはほとんど給気をしていない場合がある。このため、第3種換気だと最低0.5cu/uの気密性が欲しい。 
だが、各室に計画給気が出来る第1種セントラル換気方式だと、0.6回転は必ずしも必要ではなく、R-2000住宅の1.5回転よりは若干厳しい1.0回転で十分でないか‥‥というのが私の直感。

そして、強調しなければならないのは、日本のすべての大手住宅メーカーは、このパッシブハウスの基準を完全に無視せざるを得ないのが現実。
なぜなら、R-2000住宅の1.5回転ですら、ツーバイフォーの大手メーカーは達成することが出来なかった。 三井ホーム、地所ホーム、東急ホームなどの大手は、施工を外部に委託している。 この外注業者を管理し、職人を徹底的に教育してゆける指導者が各社とも不在。
断熱材の厚みなどは、仕様で決めることが出来る。 しかし、気密性能は仕様では決められない。 徹底した指導と訓練で保障するしかない。 そんな簡単なことがツーバイフォーの大手には出来ないことが、R-2000住宅で判明。
ましてや、スカスカの鉄骨プレハブや住林などの木軸工法では、シャッチョコ立ちしてもR-2000の1.5回転という漏気性能は不可能。

いずれにしても北米と北欧では、50パスカルの加圧の圧力を加えた時に、どれだけ室内の空気が回転するかでその住宅の気密性能を測定する。 
正確な数字ではないが、この50パスカルは 風速30メートルの嵐に匹敵するらしい。
1時間に5〜6回も入れ替わったのでは、折角の空調が意味をなさない。 したがって、1.5回転以下であらねばならないとしたのがカナダのR-2000住宅。
これを2.5倍も上回って、0.6回転以下でなければならないというのがパッシブハウス研。
そして、注目しなければならないのは、このパッシブハウス研の意見がヨーロッパ各国の賛同が得られて、EUの基準になりつつある事実。
しかし、北米ではこの基準に追随出来ず、また 日本をはじめとした気密後進国の反対もあって、パッシブハウス研の基準はEU規格ではあっても、未だに国際規格ではない。
ただし、世界の気密測定条件の基準は、「50パスカル時にどれだけ室内の空気が入れ替わるかで判断する」 ということは不変。
日本の住宅産業が、輸出産業として世界のマーケットへ飛躍して行こうと考えるならば、この50パスカル時に、我が社の住宅の漏気回数を明記する必要がある。 この漏気回数が表記出来ない住宅は、世界の消費者から相手にされない。

ところが、セキスイハウスにしてもダイワハウスにしても、この漏気回数を決して公表しようとしない。 つまり、「4回転〜5回転/50パスカル時もしています」 とは、恥ずかしくて口にすることは出来ない。 
つまり、日本のハウスメーカーは、日本というガラパゴス化したマーケットでは威張っておれるけれども、海外へ出て行くとその気密性の悪さで商品価値がなく、国際的競争力を最初から持っていない欠陥商品。
その肝心なことを、日経をはじめとして日本のジャーナリストは、情けないことに誰一人として指摘していない。
いいですか、R-2000住宅が日本に入ってくるまでは、日本の気密性能の測定は、たった10パスカルで測定していたのですよ。 つまり、風速5〜8メートルという微風時に、隙間が何平方センチ/u かという、それこそガラパゴスを絵で描いたような基準を振りかざし、日本の建築界の学者先生や研究者は威張っていたのです。

台風が頻繁に来襲する日本。 その国の気密基準が10パスカル。 その怠惰な基準を R-2000住宅という強力なハリケーンが、ガラパゴス基準を完全に破壊してくれたのです。
消費者にとって、これほど喜ばしいものはありませんでした。
ただし、いきなり漏気回数といっても学界のご老体にはチンプンカンプン。
そこで、C値 (相当隙間面積) も併記して表示することにしたのです。
つまり、R-2000住宅の気密性能は、1.5回転/50パスカル時 =隙間相当面積0.9cu/u時 としたのです。
これに準じて、次に来襲したパッシブハウスは、漏気回数0.6回転/50パスカル時 =隙間相当面積 約0.2〜0.3cu/u時 としたのです。 これが、日本の住宅業界の新しい常識になったのだとほとんどの人は感じました。
とくに消費者の方は、「これで日本の基準も世界並みになった。これからは、日本の住宅性能は欧米並みに良くなってゆくだろう」 と喜びの声を挙げました。
ところが、国交省と大手住宅メーカーによる気密性能の再ガラパゴス化が、4年前より始まっていたのです。

4年前の09年4月に、「改正省エネ基準」 が施行されました。
この改正省エネ基準は、21世紀に向かってよりよいものに改正されたと考えるのが常識。
ところが、気密性能でアキレスキン筋を持つ大手住宅メーカーは、国交省へ圧力をかけて、なんと省エネ基準から 「C値の基準」 と 「換気の規定」 を除外したのです。 設計施工指針から、「気密の施工基準」 を削除させたのです。
本来であれば、カナダのR-2000住宅に精通していた坂本雄三、鈴木大隆、澤地孝男などの諸先生方は、この国交省と大手住宅メーカーの横暴に対して、身を挺して消費者の利益保全のために戦ってくれるべきでした。 ところが、各氏とも早々と体制側へ寝返るしかなかったのです。
それは、ツーバイフォー協会がR-2000住宅でカナダ政府との提携関係を一方的に破棄してしまい、諸先生方は唯一の突っかえ棒を失った。 支柱がなくなったのです。
もちろん、建設大臣認定制度が廃止され、R-2000住宅は 「建設大臣の認定制度」 ではなくなりました。 しかし、協会の独自の制度として残すべきでした。 ところが当時の鎌田協会専務が、三井ホームのF常務にそそのかされてカナダ政府との紳士協定を一方的に破棄してしまったのです。
これは、名を上げた2人とカナダ在住のI氏などの策動によるものでしたが、地場ビルダーが一致協力してこのR-2000住宅運動を支えられなかったところに、最大の原因があります。

諸先生方は、協会などの政府関係機関や会社、諸団体からの研究委託を受けて研究をするのが仕事。
ところが、研究を委託してくれる肝心の組織がなくなり、日本とカナダの友好関係が瓦解したとなると、これに依存してゆく訳にはゆかない。
また、次に登場したQ-1運動は、限られた人々による限定運動。 
期待したパッシブハウスは、カナダ政府のようにドイツ政府が動いてくれそうにない。 
しかもドイツでの推進母体はパッシブハウス研という民間団体。 そして、日本国内に出来る民間のパッシブハウス系の団体も拡がりの展望に欠けている。 とても日本政府を動かすだけの力量がなく、研究委託をしてくれる相手になりそうにない。
つまり、住宅関係の民間のイノベーションが無さすぎるため、諸先生は働く場がなく、結局は国交省の言うがままにならざるを得ない。
その結果としての、気密性能の無視という最悪事態の出現となったのです。
その最悪事態を、嫌というほど気付かせてくれたのがユウキ邸の気密測定報告書。

エクセルシャノンは、試験データを出す以上は、試験法の根拠となる出典を表示しなければなりません。 改正省エネ基準に気密がなくなったものだから、IBEC (省エネ機構) の「住宅の性能気密マニュアル」 (2004年5月) に依っている。
そして、測定は10、20、30、40、50パスカルの5回しかやっていない。
今までのR-2000住宅のように80とか100パスカルという測定は一切なし。
第1回   10.1pa   通気量31.0m3
第2回   24.4pa      85.0m3
第3回   32.9pa      122.0m3
第4回   44.4pa      143.0m3
第5回   57.9pa      155.0m3
そして、10パスカルの時の総隙間相当面積が21センチ。 これを実質延べ面積143.99uで割った0.146cu/uを相当隙間面積としている。
つまり、30年も昔のままの たったの10パスカルの総隙間面積から、C値を表示しているのです。 諸先生方、貴方達の妥協の結果は、こんなみっともない有様になっているのです。

ただし、エクセルシャノンは10パスカルだけの表示では良心が痛んだのか、50パスカル時の漏気回数も記述してくれている。
50パスカル時の漏気量は160m3。 これを住宅の容積374.37m3で割ると0.427回。
これだと、C値は0.146センチではなく、0.26センチ程度になるのでは‥‥?!

いずれにしろ、ユウキ邸はパッシブハウスに匹敵する気密性能を持っていることが判明。
それにしても、気密測定の現場がこのように乱れていると知っていたら、無理してでも参加して、100パスカルまでかけて、その数値を見たかった‥‥‥というのは、文字通り《後の祭り》。
そして、ユウキさんの提案が面白い。
国交省住宅局が、気密と換気を復活させるとは毛頭考えられない。 としたら経産省のトップランナー基準に気密性能基準を含めさせて、「50pa加圧時の漏気回数は1.0〜1.5回以上」 と省令で定めさせる方が、唯一 実効性のある方法かもしれない‥‥。
この提案には、私も大賛成 !!!
posted by uno2013 at 17:23| Comment(0) | Q値0.8W以上の住宅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。