2013年06月30日

2012年上半期 読んで面白かった本ベスト10 (下)


先週上げた100冊の中から選抜した ベスト10候補作品の■印が34冊。
その中から、勝手に選んだ独善的ベスト10が以下。
いつものことながら写真の写りが悪いのは、ご容赦あれ。

◆10位

理想書店.JPG

この著書で取り上げている書店数は60店。北海道から九州にいたる広範囲の店を網羅している。いずれの店も「お客様第一」をスローガンとして掲げている店。
書店は、激しいお客争奪戦に晒されている。東販や日販から送られてきたものを適当に並べ、売れなかったら返品すれば良いという旧来の商売のやり方では生き残れない。 地域のお客さんを引きつける品揃えと、それを展示する高度な技術が求められている。
しかし、中には大学生協の書店とか、医療機関が軒を連ねている地域など、立地条件によって客質というかお客様そのものの要求内容が異なる。 きちんとしたマーケテングの上で各種の本を選択し、お客が常に訪ねたくなるように陳列し、飽きさせない技術の数々を紹介している。
この著は、著者が6年間に亘って業界紙に発表してきたリポートを集大成したもの。
各店長や店主の拘りや、その深い技術力に感心させられた。 ただ私が訪れている店は、八重洲ブックセンターと丸善日本橋店の2店しか取上げていなく、是非とも他の店も訪れてみたくなったのは事実。

◆9位

再生医療.JPG

京大・山中伸弥教授の ips 細胞の発見以来、今までの「臓器移植」に変わって、「再生医療」が注目されるようになってきた。今までは交通事故などで亡くなった他人の臓器を移植するので、チャンスがめったになく、また拒絶反応を起こすこともしばしば‥‥。
それが、自分の皮膚細胞にたった4種類の遺伝子を入れることによって、万能性を持つ細胞ができるという発見。当然のことながら、多くの患者から熱い視線で期待されている。
しかし、ips 細胞が発見される前は、慶大を中心にES細胞による再生医療の研究が日本では主流を占めていた。このほかに、1999年に発表された骨髄の中にある幹細胞‥‥体性幹細胞を各種治療に役立てるという動きもある。
著者は、その中で韓国人を相手に幹細胞を投与する京都にあったベタスクリニックに焦点を当て、再生医療の闇の世界を鋭く抉っている。
ともかく、未承認で高価な再生医療が日本でもかなり横行しているらしい。 全く新しいテーマだが、あっという間に読み終えさせた迫力には感動した。

◆8位 

夜回先生.JPG

これは、1月20日のこの欄で紹介済み。
カテゴリの「書評 (その他) 」から入られたし。
ともかく、子供のいじめ問題で、これほどまともに取り組み、おおきな成果を挙げている例はない。
実践報告に、心から納得させられる。

◆7位

限界集落.JPG

2年前に、こんな面白い小説が出版されていたのですね。
この小説は、モデルがあって書きおろされたものだと考えて、あっという間に読み終えた。
ところがモデルは一切なく、著者は限界集落の実態をはじめ、減農薬農業の実態、さらには山村の生活実態やベンチャー経営の実態など20冊にも及ぶ本を調べ、その上で構築した全くのフィクションだったのですよ‥‥。
その20冊の本には、私が読んだものが数冊もあり、なんとなく懐かしくなりました。 そうしたデーターからこうしたフィクションを想像した著者に対して、尊敬というか限りない親しみを覚えました。
限界集落というのは、65歳以上の老人が半分以上占める集落のこと。 しかも舞台になった集落は山間僻地に位置していて、総人口がたったの50人。
そこへベンチャー上がりの若者が行って、農業法人を立ち上げ、新しい農作物の作付けや販売ルートを開拓して村民に希望を持たせると言うストーリー。
下手な推理小説や私小説などよりも、数倍面白いことを保証します。

◆6位

 表紙.JPG

これは、6月5日付でこの欄で紹介したばかり。
ある偶然で、京都の日本海側の町会議員に立候補し、またある偶然から町長選挙に立候補し、無敵と考えられていたハコモノ前町長を引きずり降ろし、破産間際の町財政を立て直すとともに、町の活性化の実績を積んでゆく実話。
話としてはそれほど面白くない。しかし、町を活性化させてきているその実績には頭が下がる。
最近は、変な男の政治屋よりも、女性の真面目な政治家の方が遥かに優れているという好例。

◆5位

絶望表紙.JPG

これも2月28日付で紹介済みのもの。
面白い本を読んで感動すると、自分一人で我慢しておくことが出来なくなり、思わずこの欄に書き込んでしまう。
このため、今回もベスト10のうち5作品が、既紹介済みのものになってしまった。
8位の「夜回り先生」、6位の「お母さん町長」、5位の「出版・新聞」、4位の「アファンの森」、それに1位の「チャイニーズ・ドリーム」がそれ。
出版や新聞の危機が叫ばれてから久しい。 この種の本は10冊以上読んでいるが、その中でも出色ものだと思う。

◆4位 

アファン.JPG

これは、3月25日にこの欄で紹介済み。
ニコルの作品は、肩が凝らず気楽に読める。 私が好きな著者の一人。
今までいろいろ読んできたが、この著が一番面白かった。 いろんな経験と実績を積んで、内容に重みが感じられたからだろう‥‥。
人徳が読ませているという面もある。

◆3位

コンビニと.JPG

流通に関しては、故渥美俊一氏から直接指導を受け、あるいはペガサスクラブでアメリカの住宅資材の流通実態報告をさせられたということもあって、少しは詳しいつもり‥‥。
そして、著者の加藤直美さんの名を知らなかった。
したがって、たいしたことはないだろうと読み始めたら、その内容が充実しており、分析力も的確なのに驚かされた。
つい最近まで、地方の郵便局の廃止が政治的な大問題として取り上げられていた。
しかし、今度の東日本大震災で、多くの郵便局が被害を受けて多くの市民が困ったはずなのに、郵便局のことはほとんど話題にならなかった。
そして、話題をさらったのはコンビニ。
被害エリアに5000軒もの店舗があり、そのうち2000店が大きな被害を受け、1日以上閉店を余儀なくされた。 だが、コンビニの立ち直りは早かった。
直ぐに対策本部が設けられ、ヘリコプター、トラックだけでなく自衛隊、JALまで総動員して買い物難民の解消と、品揃いの不備に対応した。
そして、コンビニこそ、庶民にとっては最も頼りになる身近なインフラであることを立証した。
そういった詳細な実態報告を読んで、今さらながらにコンビニの持つ社会的使命の大きさに気付かされる好著。(5月3日の独善的週評を参照されたし)

◆2位 

ロジカル田.JPG

独善的週評が、去る6月21日に400回記念を迎えたので、住宅・建築、林業関係の本をしこたま買ってきた。ところが、その中に400回記念に相応しい面白い本が1冊もなかった。 そこで、急遽この本にピンチヒッターを頼んだ。 見事にランナー一掃のタイムリー2塁打をかっ飛ばしてくれたと感謝している。
野菜やリンゴづくりでは、結構面白い本がある。ところがコメづくりとなると、古い福岡正信の「わら一本の革命」か、岩澤信夫の「究極の田圃」。それにあえて付け加えるならば、長田竜太の「コメで起業する」くらいしかなかった。 そこへ、堂々としたクリーンアップ打者の登場。
著者は、福岡氏と岩澤氏という無耕起の2大巨匠にすでに並んでいるといっても良い。
著者に言わせれば、「福岡氏はどこまでも家庭菜園の範囲の話。自分が食べるコメづくりの話であって、産業としての農業とは言えない」と手厳しい。
そして、岩澤氏に師事して、3年ばかり無耕起農業に取り組んでいた。
しかし、氏の田圃は大井川の下流の扇状地。小石と砂地でやたら水捌けがよく、千葉の沼地のように稲刈りの後に田圃に水を張り、藁から藻が繁殖して肥料をやらなくてもよいという訳にはゆかない。
そこで、不耕起というわけにはゆかず、今までのように15センチも深く耕すのではなく、5センチほど浅く耕す方法を開発している。
このことによって大繁茂していた春の雑草を撲滅出来、有機肥料も土の中にすきこんでしまうので、鳥に食べられる心配もなくなった。 
そして、田植えをして暫くたつと土がスポンジのようにふくらんでくる。微生物が分解した有機物をイトミミズが分解してフワトロ層が出来る。この層がコナギヒエなどの雑草のタネよりも軽いので無農薬で雑草の発芽を抑えてくれる。
無農薬・有機肥料による若きコメ作りのスターの誕生である。

◆1位 

中国ドリーム.JPG

これは、6月15日のこの欄で紹介したばかり。
農業では、ある農家がキャベツやレタス、ブロッコリーをつくり始めると、近所の農家が真似をして、一帯がキャベツやレタスの産地となることがある。
そして、これは野菜だけとは限らない。モモ、カキ、クリ、ブドウ、イチゴなとの果物の産地の場合もあれば、チューリップ、バラ、キクなどの花卉の場合もある。
農業の産地の場合は、試験場の指導ということもあろうが、往々にこうした成功例に学ぶと言う形で形成された場合が多い。
ところが中国の場合は、農業だけでなくほとんどの産業の場合も、地場の弱小業者が地元から全国へ派遣されている行商人の話を聞いて新規に物づくりを始め、その成功例を見て隣近所が真似をして、産地化していった例が多い。
著者は温州を隈なく調査して、そういった形で新しい集約産地が誕生した例が、温州だけでも百数十あるという。筆者はそれを《大衆資本主義》と呼んでいる。
農家と一緒で、隣の人の見よう見真似。 隣の人は、日本やヨーロッパのデザインを見よう見真似でコピーしたもの。
そこには、物真似が悪いとか、コピーはいけないことだと言う考えはない。
野菜をつくるようにまがいものの靴をつくり、やがて携帯電話器をつくり、太陽光発電のセルやモジュールを作り出している。
この著書が優れているのは、単なる机上論ではなく、そうした現場を足繁く通い、徹底したフィールドワークで中国の大衆資本の集積形態を解明していること。
こうしたゲリラ的な中国の大衆資本主義に、日本の携帯電話も太陽光発電も完敗。
ならずものの弱小資本軍団に、どうしたら勝ってゆくことが出来るか。
この著書が提示している問題点は、あまりにも具体的で、かつ大きい。















posted by uno2013 at 04:24| Comment(0) | 半年間の面白本ベスト10 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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