2013年05月15日

一条の見積書から浮かび上がってくる、いくつかの不安点


最近、一条工務店の見積書を3つばかり見る機会を得た。
しかし、プランをみたら肝心のロスガード90の設置位置がないものや、OA (外気の取り入り口) と EA (室外機の排気口) が、たった数十センチしか空いていないもの、連棟形式なのに設計面でも予算面でもツーバィフォーの界壁の基本的なことが分かっておらず、私だったら「こんな素人集団には、絶対に発注したくない」 と痛感されるものがやけに目についた。

つまり、こう言うことなのだろうと思う。
一条は、在来木軸の会社であった。
そこへ、ツーバィフォー最先端の i-cube が登場してきた。
社内外には、ツーバィフォーのプロが余りにも少なかった。
開発部が先行して、最高の技術体系を導入した。
しかし、営業や設計、工事の最前線には筋金入りのプロが不在。聞きかじり、見た感じでなんとなく押し付けてはきたが、やはりポロポロとボロがこぼれてしまう…。
理想的には、設計と工事の幹部社員をアメリカの現場へ最低2ヶ月間に亘って派遣させ、朝から晩まで現場に張りつかせて、基本を徹底的に勉強させるべきであった。
そして、プレハブに徹した一条工務店専用の 「設計・施工マニュアル」 を作成するべきであった。
それがなされていないので、とくに 「ドライウォール工法」 などには、余りにも初歩的な間違いが多すぎる。 現場を見ていて、正直なところ泣きたくなってきた。

昨年秋、「サスケ邸」 の完成間際の現場を案内してもらって、9月10日から20日の3回に亘ってブログで取り上げた。
施主は自信マンマンだったので、私はあえてダメを出さなかったが、恩師の杉山英男先生が見たら、「こんなものは枠組壁工法ではない」 と、怒りの大声を発せられたと思う。
ともかく、肝心のポイントが、あまりにも等閑視されていて、在来の木軸工法の欠点をそのまま残されている工法。
したがって、今までに多くの施主から、不安や疑問のメールが寄せられてきたのは、「けだし当然のことだったのだな…」 と改めて痛感させられた。
一条工務店の現場は、木軸からスタートしているだけに、アメリカの現場のように理論武装されたポリシーが見られない。
その、即席栽培の欠陥が、私が拝見した図面や見積書にそっくりそのまま反映されているように感じられた。
つまり、核になる工事に関するポリシーが見えない。

恥ずかしながら私の略歴を話すと、トステムの前潮田会長から、「ツーバィフォーで注文住宅をやりたい。是非とも手伝って欲しい」 と頼まれた。
そこで数人のプロを集め、世田谷・芦花公園に斬新なモデルハウスを建て、数人の世主の賛同を得てやっと軌道に乗り始めようとしていた時、潮田会長は 「実は私どもも本格的に注文住宅に乗り出すことになりました。是非、芦花公園の展示場を見てください」 と、当時のエスバイエルの社長に自慢げに話しをした。
それを聞いたエスバイエルの社長は怒った。
「材料メーカーが分譲住宅をやっているのなら、まだ許される。しかし、注文住宅をやるとなるとわれわれの敵となる。それが事実なら、今後は敵となるトステムからは一本のサッシも買わない !」 と。

そこでトステムからの資金が断ち切られ、多摩一番の木材店が展示場を買い上げてくれるはずだった。だが、同展示場へ出展していた年商5億円程度の小さな地場ビルダー・藤和が、「ツーバィフォーの会社なら当社が買う」 と強引に名乗りをあげ、私が人質になるのを条件に、「芦花公園モデルハウス」を買い上げてくれ、誰にも被害を与えずに済んだ。
ともかく、数人の顧客が付いてきてくれていたので3年間は 正月1日以外は休日なし。
顧客との細部の打合せや見積り、現場監督の指導、大工さんや電気屋さんを始め下職の現場教育で、月に車での移動が500〜800キロにも…。
もちろん「ツーバィフォーの設計マニュアル」と大工をはじめ全下職を対象にした「施工マニュアル」も作成した。 私が育てたツーバィフォーの大工さんは、都合100人くらいに上っている。

そういった努力が実を結んで、数年間で藤和は100億円を突破する企業になり、とくに松下電工の強力な応援もあり、北海道・よねくら、仙台・北洲、千葉・新昭和、群馬・ハラサワホーム、岐阜・宇佐美ハウジング、山口・村田ハウジング、大分・別府ハウジングという最強地場ビルダーのグループで毎月勉強会を開催して、常に新しい情報のキャッチと交流に勤めた。 東京が地場の藤和は、当然のこととして幹事役に選ばれ、ツーバィフォー協会の役員にも選ばれた。
このメンバーが核になって、後のR-2000住宅部会を発足させていった。

しかし、この藤和という優秀な地場ビルダーを潰したのが富士銀行。
当時、副社長と専務と常務の三人が派遣されていた。
バブル時代の押付方式の金貸業しか知らず、いずれも住宅会社の経営者としての資質はゼロ。唯一わかっていた経済用語はPDCA (Plan-DO-Check-Action) ぐらい。それでいて当時流行語になった「ノーパン シャブシャブ」 などには、やたらと明るかった。
社長に付け入り、やたらとカネを貸して、個人財産を形成させて金利をハネルことが仕事。
それが、命がけの努力で100億円を突破したら、このままの調子だと200億円は軽いと、バカ丸出しで 《目標200億円》 というスローガンを掲げ、新卒を大量に採用し出した。
核になる人材が育っていないうちに、売上倍増を唱えるのは身の程しらず。
この強引な作戦で、それまでは「私の仕事の99%は開発の仕事」 だったものが、何と 「60%がクレーム処理」 となってしまった。
とても、こんな会社には勤まらないと、R-2000住宅専門の会社を仲間と興し、富士銀行系に染め上げられたエセ住宅会社・藤和との縁を切るしかなかった。
2年後に当然のことながら藤和は富士銀行の手によって倒産し、社長は隠匿生活を余儀なくされ、数年前に離婚した挙句亡くなった。

私が言いたいのは、技術と人材を中心とする組織が固まらないうちに《売上倍増》を計画すると、その会社はクレームの巣になってしまうということ。
クレーム処理ほど辛い仕事はない。
消費者の一生を台無しにすることは絶対に許されないので 一生懸命頑張るのだが、誰もほめてはくれない。 これほど、ストレスのたまる仕事はない。
したがって、以来クレーム・レスを最大の目標に掲げてきた。

一条と言う会社は、業界新聞にも雑誌にもPRしない会社。
もちろん、テレビ広告はしていない。
このため、i-smart の売れ行きは絶好調だが、それほどクレームが多いとは聞いていなかった。
しかし、一条を選んだ方々からのメール内容は、満足しているものは少なかった。多かれ、少なかれ不満が書かれていた。
だが、自分の判断で選んだのであり、一条工務店を中傷するようなメールは皆無だった。
これは、一条が積極的にPRしていないことにより、口コミ客が中心になっていた成果によるものと考えられる。

それにしても、一条工務店の中堅以上の客層への浸透度は驚くべきものがある。
その結果、手なれた設計陣や工事に明るい現場監督が、思いのほか枯渇しているように感じられる。
そして、一番不足しているのは、基本をきちんと身につけ、i-smart になれた施工業者。これが払底し始めているらしい。そのような話が伝わってくる。
これは、当面の間は大きな問題として残るかもしれない。

それよりも、私が一番心配するのは、本当に設計をはじめ、社員が空調換気のことが本当に分かっているかどうかということ。
一条の設計図書を読んで、空調換気に関する知識の低さに呆れた。
Q値が0.8W前後の住宅に、如何に設備費の償却が済んでいるとはいえ、床暖房が標準仕様として採用されている異常さを、誰一人して自覚していない。
床暖房をメインにするならば、原子力発電を前提にした安い深夜電力に依存しているエコキュートシステムから率先脱皮して、太陽熱へ大きく進路を切り替えるべきではなかろうか。
太陽熱利用のヒートポンプはまだまだ需要は少ないが、太陽光発電一本やりで、やたらと小銭稼ぎを消費者に推奨している姿勢には、どうしても疑問符がついて回る。 企業としての一貫したポリシーが感じられない。

また、最近は気体遮蔽性と透湿性を兼ね備えた特殊加工紙による素子の開発が進んできている。CO2臭気成分は通さず、水分のみを通すと言う湿度換気が可能になってきている。
基材となる紙の繊維構造に細密化して、表面に吸湿性とガスバリア性 (気体の通過を抑制する性質) を併せ持つ薬剤をコーテングしているもの。
この登場により、ロスガード90の有難味が、かなり失われてきていると言う指摘もある。

そして、全熱交のロスガード90の盲目的な採用。
確かに20年前まではヨーロッパでは温水に房地域暖房が普及しており、夏は乾燥期のヨーロッパでは第3種換気の黄金時代が続いた。
しかし、第3種換気のエネルギーをタダで捨てている事への猛反省から、ヨーロッパでは第3種換気の製造が事実上中止になり、日本の換気業界の先達者として大貢献をしてくれた札幌のディックス社が、昨春で営業停止に追い込まれた。ある意味では当然のことではあるが…。
そして、ヨーロッパと北米では熱交換の中心をなしていた顕熱交も次第に日本では影が薄くなりつつある。

たしかに、顕熱交と全熱交の性能そのものを比べれば、全熱交に軍配が上がる。
しかし、どこまでも比較の問題であって、いくら全熱交を100パーセント稼働させても絶対湿度は13〜15グラムがリミット。とても、夏期の快適性は全熱交だけでは得られない。
そして、浴室・トイレ・台所からの換気は、匂いが移行するので 部分間欠運転にとどめ、カビが生える温床になっている。
これで、熱回収率90%と言われても、誰も納得出来ない。

仮に、40坪 (132.5u) の3LDKの住宅があったとしよぅ。
カナダのスーパーEの仕様では主寝室は36m3で、それ以外はLDK各18m3、2つのトイレと浴室も各18m、子ども室には18m3、それぞれ給気しなさいと言っている。主寝室と合わせると180m3の給気が必要ですということ。
日本のシックハウス対策では一律0.5回転/時。これだと166m3程度。
一条の分配器はすぐれもので、各室18m3の分配はきちんとやってくれる。ただ、パイプが100ミリ以下で、細いところは耳鳴り音が響いて不評な面も…。
しかし、給気の面では心配していない。
しかし、匂いが移転しない場所からの排気となると、当然一番排気をしたい台所、浴室、トイレ、シューズルーム、クロゼットからは行われず、臭気が溜まる一方にはならないだろうか。

私は、黙ってトイレからは25〜30m3、浴室・台所から50m3は排気する。すると残りは30〜40m3。これはシューズルームとクロゼットから15〜20m3となる。
一条のプランを見て、一番感じたのは排気計画。これを設計マニュアルにどのように書かれているのだろうか。排気不足で室内は常に加圧状態におかれているのではなかろうか。
それと、壁掛けエアコンの位置とドレーンの処理。当初のように壁内で行うと気密性能が低下してしまう。現しの配管で許されるのだろうか ?

ともかく、ダクトによる給排気計画、リターン換気計画、機械室の位置、OAとEAの位置の最善な方法の選定でプラン計画の半分の時間がかかる。最低3日の仕事。そこまで真剣に考えるから、デシカによるセントラル空調換気計画では最高の室内空気質環境が得られる。
正直いって、現在の一条の設計士では、完全な空調換気計画をこなせる人間は皆無ではなかろうか…。
これは、それほどがっかりしなくてもよい。
一流のはずの空調換気の関連メーカーの技術者でさえ、がっかりするような欠陥図面を、堂々と顧客に提案し、大顰蹙を買っているのが実態だから…。

一条工務店のゼロ・エネルギーハウスの性能値と価格は大変評価したい。
地場ビルダーの中で、何人の人が、一条の見積書を見ているのだろうか?
しかし、急速に普及するということには、反面大きなリスクと危険もついて回る。
その点を頂門の一針として、心して頂きたい。


posted by uno2013 at 16:43| Comment(0) | ゼロエネルギーハウス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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