2013年04月10日

なぜTJI壁パネルに 大きな期待を持つようになったのか… (下)


最初に、前回の記事の間違いを訂正させていただきます。

カナダのR-2000住宅は、それまでの日本の主流であった外壁のU値 (熱貫流率) が0.486Wではなく、「北海道では0.28W、仙台では0.314WのU値を求め、出来たら東京も仙台に準じなさい…」 と指示していた。 このため、北洲、マイスター、ハーティの専業3社は、すべての外壁を206に変えたと書きました。ここまでは間違っていません。
ただ、3社とも0.314Wギリギリの性能だったのだろうという印象を与えたのは失敗。 
熱伝導率0.038Wの高性能グラスウール14センチを用いると、外壁のU値は0.289Wとなり、各社とも限りなく北海道の基準に近付いていた事実を報告させていただきます。

そして、10数年前から日本では、R-2000住宅の半分程度の U値が0.5W台に過ぎない薄っぺらな外断熱が、如何にも断熱住宅の本命であるかのような顔をして 消費者を惑わす悪徳商法まがいが横行しました。 
ごく最近までU値を表示もせずに、ラサール石井に「外暖熱」と叫ばせ続けたコマーシャルは、あまり褒められたものではありませんでした。 大手住宅メーカーの技術屋さんは、軒なみ渋い顔で批判をしていました。

しかし、これとは別にドイツ生まれの軽量な湿式工法による外断熱が、5年前から一斉に日本へ紹介されるようになりました。 綿半のEPSによる「シュートサーモクラシック」や、北洲のロックウールによる「アルセコ」などがその代表例。 この種の断熱システムはワンサと導入されています。
ヨーロッパでは、主にRC造の外断熱として用いられているもの。 しかし、上階への類焼を防ぐという点から薦められるのがロックウール。 音熱環境と韓国の碧山との共同開発によるエコ・ラメラ・ボードも ドイツの隣のオーストリア生まれで、同系統。
こうした湿式工法の最大の特徴は、ベースやトップコート、仕上げ塗装も透湿性の湿式を採用していること。

3年前にドイツへ パッシブハウスの調査で訪れた時、木質構造で最もびっくりさせられたのが大型木質構造のLVL建築でもなければCLT建築でもなかった。 すべて透湿性の材料で木材を囲い、木造住宅の木材の腐れを防いでいたことでした。
つまり、内部の石膏ボードの下には透湿性のインテロをベバーバリアとして使い、充填断熱材は主として木の繊維、地震の心配がないので外壁にはシージングボードないしはインシュレーションボードを採用。
そして繊維方向を外側へ向けて揃えたロックウール・ラメラ。
その外側にベースコートを薄く塗り、グラスファイバーのメッシュを中に入れてその上をカラーつきのトップコート仕上げ。
ともかく、使っている素材のすべてが高い透湿性の材料で構成されています。 これだと確かに木は腐らない。 日本の木軸工法よりは はるかに合理的で安全。
しかし 日本では高い耐震性が求められるので、シージングボードでは問題外。 構造用合板ないしはOSBが不可欠。
さらに、日本の高温多湿の夏には このドイツ生まれの壁が全く使えない。 
というのは、ヨーロッパは夏期が乾期。 湿度がやたらと低くて蒸し暑さはゼロ。 
ところが、日本へドイツの壁を持ってくると湿気が換気だけでなく、床、壁、天井面から激しく侵入してくる。 インテロの工学博士のMoll社長に計算してもらったら、「日本では最低9ミリ以上の非透湿建材で覆わないと湿度過多でダメ」 とのご託宣。
したがって、日本ではドイツの持つ理想的な透湿システムの ほんの一部しか使えないことが判明しています。

ただし、R-2000住宅の206の壁に、80ミリのロックウール (熱伝導率0.038W) のアルセコを採用すると、外壁のU値は0.19Wとなり、一条工務店の i-smart の0.2Wを上回ります。
さらに、KMブラケットを採用して100ミリのロックウール外断熱を採用すると、U値はなんと1.64Wとパッシブハウスに限りなく近くなる。
やはり本命は、206+外断熱になるのか…。
・一条工務店    140+50=190ミリ。  U値 2.0W
・アルセコ      140+80=220ミリ。  U値 1.9W
・KMブラケット  140+100=240ミリ。  U値 1.6W
なんだかだといって、これからはカネがかかっても200ミリ以上の壁厚が求められる時代が来るのだな、と肌で感じさせられました。

しかし、地価の高い東京で、そう簡単には壁を厚くする訳にはゆかない。
40坪の総2階建で、壁面積が130u、開口部面積が40uの住宅があった仮定します。
この住宅の外壁と開口部のU値が、一条工務店並みだったとします。
外 壁  130u×0.2=26.0W
開口部   40u×1.3=52.0W
計           78.0W
これに対して、外壁は従来のR-2000住宅と同じ206のままとし、開口部の性能を1.0Wにしたと仮定すると…。
外 壁  130u×0.29=37.7W
開口部   40u×1.0= 40.0W
計           77.7W
つまり、カネをかけて壁を厚くするよりは、U値が1.0W以下の比較的安価なサッシを探した方が、熱損失が少なくて済むのです !!
私が 「やたらと壁を厚くするよりは、性能の良いサッシを探す方が先決だ」 と騒いでいる理由が分かっていただけると思います。

そうしたモヤモヤした気分の時に、TJIの210で壁を組んだ現場を案内してもらいました。
ご案内のように、TJIというのは床根太材として開発されたもの。 それが屋根タルキとして使われただけでなく、最近ではヨーロッパや北米では外壁用としても使われ始めている素材です。 
その現場を見た時は、壁厚よりも5.0間とか6.0間という大きな一体壁を吊り上げているのに痛く感動しました。 この一体壁こそ壁構造の本命。 しかも両側にOSBを貼っているので壁倍率7.7倍を県林業試験センターの実験で取得しているではないですか…。 
何しろ耐震性には特別に敏感な私なので、その数値と一体壁に激しく共鳴。
ただし確認申請は、諸般の事情を考えて5.0倍で申請しているとか…。 ともかく直下型の地震の来襲が叫ばれている東京エリアでは、飛びつきたくなる内容を持っています。

10p 9.1m.JPG

しかし後で、この壁パネルのU値を 私なりに手計算してみたら、限りなく0.16Wに近い1.65Wなので2度びっくり。
普通、210のスタッドで作った壁を計算すると、U値は1.8Wにしかなりません。
これは、壁の場合はスタッド以外に上下枠、頭つなぎ、マグサなど23%が木部による熱橋部分として計算させられるから。
つまり、235ミリの壁厚全体に断熱材が入っている部分は 77%しかカウントしてくれません。 このため、0.18Wという数字になってしまうのです。

これに対してTJIは、H型鋼の上下のフランジに当たる部分には203ないしは204材が使われているのですが、熱橋となるウェブの部分が210の38ミリではなく、9〜12ミリのOSBが使われています。 スタッドに比べると1/3〜1/4と少ない。
つまり、210の普通のスタッドだと熱橋部分は23%に及びますが、それが11.5%に半減するとして計算してみると、U値は0.165Wになってしまいます。 厳密に計算すると、KMブラケットの140+100ミリの0.164Wに匹敵するかもしれません。
そして、断熱厚を200ミリで抑えたら、内側に38ミリの配線・配管用の空間をとってもKMブラケットに比べてもそれほど壁が厚いわけではない。
ということが分かって、TJIによる壁パネルの性能の良さを、初めて認識しました。

それと、大きな期待を抱いたのには もう1つ大きな理由がありました。
それは、このTJIパネルが、準防火地域に使えないかとの相談を受けたのがきっかけ。
見学した建築現場は、準防火地域ではありません。 しかし、施主の要望によって0.1Wのトリプルサッシではなく、1.7Wのペアの引違いサッシを4ヶ所も採用していたのです。

1.7Wの引違い.JPG

したがって、FIXやオーニングなど性能値の高いトリプルガラスを多用しても、当然のことながらペアガラスの低さに引きずられ、サッシの平均U値が1.39Wとなっています。

1.0WのFIX他.JPG

この数字を見て考えさせられました。
準防火地でなければ、実質熱回収率90%のデシカを採用すれば、なんとかQ値を0.7W台にして、ゼロエネルギーハウスにすることが出来る。
しかし、準防火地域で使える高性能サッシというと、良くて1.7Wしかない。 下手をすれば1.9Wになってしまう。 しかも、大きさも激しく限定されてしまう。 正直なところ、まともに使えるものがない。
価格を無視すれば何とか1.5Wのウッドサッシがあるにはあるが、残念ながら手を出すわけにはゆきそうもない。
なれば、性能を稼ぐには外壁の厚みと熱回収換気に全力を注ぐ以外にはない。
「サッシと言う有力な武器を準防火仕様では取り上げられる以上、消費者のために出来る選択肢は壁厚と熱回収以外にはない」 という事実を、嫌というほど叩込まれました。

しかし、嬉しいニュースもありました。 スカスカの引違いサッシを4ヶ所も使っているのに、この住宅の気密性能の測定値が、なんと0.26cu/uだったというのです。 パッシブハウスの厳しい数値をクリアーしているではないですか…。 この高い気密性能があれば、デシカは最高の機能を発揮してくれるはず…。
そういった気密性の面でも、TJIによる一体パネルは、消費者や地場ビルダーにとっては大きな福音になります。

外観2.JPG

準防火という大きなハードルがある以上、大型パネルを前提にした場合は、上図のようなサイデング仕上げもままなりません。
日本のサッシメーカーが頑張ってくれない以上、消費者とビルダーと設計士は、総力を挙げて知恵を絞り出さないと、快適で省エネな空間を得ることは、ことのほか難しいというのが現実。

タタミルーム.JPG

改善すべき箇所も、限りなく出てきます。

そして、最終的に問題になるのが価格。
北海道の何社かの仲間は、40坪で一条工務店を上回る性能値で坪50万円を切る猛者が出現しています。 耐震性に疑問が残っていますが、一条工務店に払う建築資金さえ用意すれば、メガソーラーのように多くの世帯に一切の迷惑をかけずに、ゼロエネルギーハウスを完成させられるのです。
道東でも、坪60万円以下で、一条工務店を上回るゼロエネルギーハウスの誕生が十二分に可能になってきています。 4〜5kWの太陽光を搭載するだけでお釣りがきて、一条工務店の太陽光用の資金手当制度にオンブする必要性はありません。

それに匹敵する価格が、準防火地域でなければ東京エリアでも TJIの新しい大型パネルの出現で 大きな可能性が出てきています。 設備や部品などではまだまだ開発の必要性はありますが、希望が大きく膨らんできています。
そして、果たして準防火地域でも、果敢なトライが成功してゆけるかどうか…。

それにしても、この日本国で、TJIパネルが大臣認可を得て、耐震性が非常に高くて限りなくゼロエネルギーに近い住宅が、誰でも簡単に建てられる日がやってくるのは、一体いつ頃になるのでしょうか ?
もちろん先駆的な消費者があって初めて達成されること…。 一人でも多くの先駆者が名乗りを上げられることを切望致します。











posted by uno2013 at 08:10| Comment(2) | ゼロエネルギーハウス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
何かしたのかな。そういう解釈をする事も可能だからなw
Posted by 藤本隆宏 熱愛 at 2013年06月28日 00:16
アクセサリー 通販
Posted by 時計店 at 2013年07月29日 19:59
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