2013年04月05日

なぜ急に TJI壁パネルの肩を持つようになったのか… (上)


長い間、東京周辺で仕事をやってきたので、必然的に狭小宅地と付き合わされてきた。
建築費よりも何よりも 土地代が高い。
このため20年以上に亘って、壁厚は最低の89ミリの乾燥材のスタッド、つまり204 (ツーバィフォー) の普及に専念してきた。
しかし、今から23年前の1990年にカナダから、当時としては信じられないほどの超高断熱・高気密のR-2000住宅が日本へ紹介された。

今の言葉で言うならば、Q値 (熱損失係数) が北海道で1.2W/u、仙台や東京では1.4W/u。 東京の次世代省エネ基準の2.7Wに比べると約2倍という性能。
気密性能は50パスカル加減圧の両方をかけて、C値 (相当隙間面積) で日本全国共通で0.9cu/u以下。 北海道の当初の次世代基準が2cu/uだったから、これまた2倍以上。
何度も書いてきたことですが、断熱材を厚くすれば何とかQ値はクリアー出来る。 しかし、工事を外注している大手住宅業者は0.9cu/uというC値をクリアーすることが出来なかった。 安易に考えてR-2000住宅に取り組んだが、完成検査でC値が不足しているのが発覚。 たが、気密工事は後で修正が効かない。 このため、軒なみ尻尾を巻いて敗走する破目に…。
つまり、自社に施工部隊を持ち、きちんと監理出来る監督がいない会社では、一条工務店以外では この数値をクリアーしている大手は未だにない。
大手住宅メーカーのこの欠点は、修正されないどころか国交省に泣きついて、ついに次世代省エネ基準から 「気密性能」 の文言を取り払ってしまった。 
それを黙認せざるを得なかった学識経験者も、原発の安全性を高らかに謳っていた原発村の学識経験者と同じように、消費者からの信用を見事に失った。
つまり、次世代省エネ基準は、大手住宅メーカーのためのものであって、消費者のことは無視されていることが判明。
ヨーロッパ各国では、カナダの0.9cu/uどころではなく、「住宅の省エネ性能をきちんと消費者に担保するには、0.3cu/uの気密性能が必要だ」 と言っているのですよ…。
それを知らない振りをしていること自体が、馬脚を現している立派な証拠。 それにしても、原発関係に比べて住宅関係記者の突っ込み不足が気になる…。

話を戻します。
R-2000住宅では、当初は住宅全体の熱損失、つまりQ値という概念は少なかった。 そして強調されていたのは部位毎のU値 (熱貫流率)。
U値といっても、一般の消費者にはピンとこない。
当時、日本で一番省エネ住宅として流行していたのが、204 (ツーバィフォー、89ミリ厚) の壁に高性能グラスをいっぱいに詰め込んだ住宅。この壁のU値が0.486W。
と言われても、ますますピンとこないでしょう。

ログハウスという丸太造りの家はご存じですね。 ログハウスメーカーは、「丸太造りの家は断熱性能が高い」 と自慢タラタラ。
しかし、204の壁一杯に高性能グラスウールを詰め込んだ壁に匹敵する性能をログハウスで担保するには、23センチ厚の丸太が必要なのです。
23センチというと、2階床などに使っている210 (ツーバィテン、23.5センチ) とほぼ同じ厚さ。 つまり204の壁厚の2.6倍もの厚い丸太を外壁全面に使って、やっと達成出来る数値なのです。 それこそ木材のお化け。
したがって、R-2000住宅が紹介されるまでは、204の壁一杯に高性能グラスウールを詰めた住宅が、それこそ肩で風を切って威張っておれたのです。

ところが、R-2000住宅は、U値が0.486Wの性能ではダメだと決めつけてくれました。
北海道では43%も性能を上げてU値を0.28Wにしなさい。 
仙台では36%性能をアップしてU値を0.314Wにしなさい。 
そして、出来たら東京も仙台に準じなさい…。
この0.314WというU値を達成するには、204の壁では逆立ちしても不可能。 どうしても206の壁にする必要がありました。
このため、内地のR-2000住宅の専業ビルダーは、仙台の北洲ハウジング、群馬のマイスターハウス、東京のハーティホームの3社とも 外壁を一斉に206に切り替えたのです。
したがって、206材を使っていないところで、「うちはR-2000住宅も出来ます」 と言っているのは真っ赤なウソ。
つまり、一頃は206材を外壁に使っていることがステータスシンボルでもあった…。

しかし、6〜7年前から、ドイツを中心とする 「パッシブハウス」 が日本へ紹介されました。 この性能値がR-2000住宅以上にすごかった。
簡単に言うならば、部位別のU値は、R-2000住宅の2倍に。
気密性能はR-2000住宅の3倍にしなさいというもの。
日本の次世代省エネ基準とはあまりにもかけ離れていて、比べようがなかった…。
寒冷地の北海道などはそれに準ずるべきかもしれないが、東京などの内地は明らかに過剰性能。 断熱や気密にやたらとカネをかけるよりも、もっと有効的なカネの使い方を工夫すべきだと痛感させられました。
ところが、一条工務店が i-smart という住宅を開発し、単に北海道だけでなく日本全国でこの商品を一斉に発売しだした…。
同社は、気密性能は0.59cu/u。 Q値は0.82Wと公表。
しかし、実際のC値は0.6cu/uで、Q値は0.87W程度だと私は実感しています。

つまり、R-2000住宅の C値0.9cu/u、 Q値1.4Wでは、先進的な消費者は相手にしてくれなくなってきた。 
一条工務店と同じ性能を提供出来ない地場ビルダーは、知らない間に多くの消費者を失っている。 ただ、消費者が相見積りも取らずに黙って一条工務店へ走っているので、多くの地場ビルダーや住宅会社はその動きに気付いていないだけ。
私がパッシブハウス対策ではなく、地場ビルダーは一条工務店対策こそ急ぐべきだと強調しているのは、一条工務店の急伸を目撃しているから…。

さて、一条工務店は R-2000住宅のQ値1.4Wから、どうして0.82〜0.87Wという高いQ値を達成出来たのでしょうか。 
つまり、熱損失係数を40%も改善出来た秘密は、一体何だったかということです。
主な要因は3つあります。
1つは、90%の熱回収を図れると呼称している全熱交換の 「ロスガード90」 を採用したこと。 
しかし、全熱交は湿気とともに臭いも新鮮空気に移しますので、トイレと浴室という2大排気部分の空気から熱を回収していません。 外へ熱を垂れ流し…。 したがって、トイレと浴室から24時間排気をしたとしたならば、実際の熱回収率は70%台と低いはず。
2つは、PVCのアルゴンガス充填のLow-Eペアサッシに、浴室を除く全開口部にダブルハニカムのハニカムシェードを装着したこと。 
これで開口部のU値を1.3Wで計算しているようですが、ハニカムシェードを下まで降ろすと結露が生じるので下部を10センチほど開けて生活しているのがほとんど…。 したがって、サッシの実質的な性能は1.4〜1.5W程度ではないかと言うのが私の推測。
3つは、外壁の断熱性能を 206の充填断熱にプラスして、50ミリの外断熱を加えたこと。
私は、この壁断熱が最も効果的に作用していると考えています。

断熱材といっても、その熱伝導率によって効果が大きく異なってきます。
昔は、グラスウールというとその熱伝導率は0.05W/m・k程度のものでした。
現在でも天井に吹込むものには0.052Wという低級品が使われている場合がありますが、ほとんどが0.04Wになってきています。
そして、壁に充填する高性能グラスウールは24キロ相当で0.038Wと考えてよいでしょう。32キロ相当という0.036Wはめったにお目にかかれません。
しかし、EPSと言うビーズ法ポリスチレンフォーム特号だと0.034W、1号だと0.036Wの性能を持っています。ロックウールの50キロ以上に匹敵する性能。

さて、一条工務店がどのEPSを使っているかを私は確認していません。 0.036Wの1号を使用していたと仮定すると、外壁のU値は0.2Wとなり、私が使っていたR-2000住宅の0.314Wを36%も上回っている勘定に…。
つまり、内地の外壁のU値も、0.3W台から0.2Wを下回る時代になってきたのです。
R-2000住宅の206の0.314Wの充填断熱の時代から、充填断熱+外断熱の時代に入ってきたということでもあります。
というと、「だから20年前から外断熱の時代だ!! と叫んできたのだ」 という輩が現れるかもしれません。
しかし、熱伝導率が0.036Wの50ミリのEPSでも、外断熱だけで得られるU値は、内外の仕上材を勘案しても0.568Wに過ぎません。 204の89ミリの0.038Wのグラスウール充填断熱材に比べても17%も低くて相手にならない。

それに、外断熱には断熱材を厚くすればするほど、仕上げのサイデングやモルタル、タイルなどの保持力が極端に落ちるという欠点があります。
あの中越地震で、外断熱が突き上げる2500ガルの猛威で見事に剥落しているのを目撃しました。
したがって、私はKMブラケット以外での外断熱には大きな疑問を持っています。
まして、直下型の地震の発生が大声で叫ばれている東京圏で、やたらに外断熱を厚くして行こうという外断熱至上主義者の言動には、強い反発を覚えます。

しからば、外断熱として熱伝導率のよいネオマフォームの30ミリを採用すれば、外装仕上材の保持力の面からも問題がないではないか……という意見が出てくると思います。
しかし、いくら熱伝導率が0.021Wであっても、30ミリでは内外の仕上材を考慮したとしてもU値は0.558Wに過ぎず、50ミリのEPSを若干上回るだけ。
数年前に、帯広で木軸からツーバィフォー工法に切変わったばかりのビルダーの現場を見て、ゾーッとしたことがあります。
それは204にグラスウールを充填し、内側にベバーバリアを貼っていました。 しかし、帯広だとこれでは断熱不足。そこで外断熱としてネオマフォームを取り付けていたのです。
ビルダーとしては施主のためにと頑張ったのでしょうが、これでは内部に侵入した湿気は逃げようがありません。 ベバーバリアとして透湿性のインテロを使えばなんとかなりますが、当時はインテロが輸入されていなかった。

つまり、外断熱に非透湿性の断熱材を使うと、充填断熱材も出来たら非透湿性のものにしたい。 一条工務店が、外断熱としてEPSを使い、充填断熱材もEPSにしているのは それなりに意義があるのです。
しかし、充填断熱材にEPSなどの硬質断熱材を採用した場合は、クーラーのドレーン配管などの配線配管工事に苦労させられます。
断熱欠損を防ぐためと気密性を維持するために、現場発泡用の管を抱えて、現場監督が走り回らねばならないはず…。
そして、ベバーバリアを排除しているので、万が一の結露を考えて 一条工務店は土台や1階床根太だけではなく、壁パネルにも防蟻処理をしたランバーを採用しています。

外断熱には、こうした諸問題があるということを、消費者は知っておくべき…。


posted by uno2013 at 17:04| Comment(1) | ゼロエネルギーハウス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
カルティエ 時計
Posted by 通販 腕時計 at 2013年07月29日 19:59
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