2013年03月10日

中央官庁の観念的スマートシティ vs 具体的なプラチナ社会


今日の札幌は湿った雪と強風で大荒れとの予報。 北日本海側全体が寒冷前線の通過で雪に見舞われるとか…。
これに対して、昨日の東京は23℃を超えるバカ陽気。この陽気に誘われて、小平の早咲きの桜が早くも1厘咲き。 春なのですね…。

桜3.JPG


さて、皆さんはICTをご存じか ?
スマートシティの講演を聞いているとしきりに出てくる単語。
帰ってネットでICTを調べたら、テレビの監査委員会、インテリアコーデネィター、列車制御システム、テニスクラブなど多様な略称が重なっている。
スマートシティの論客が用いているのは、今までの「IT (Information Technology)」の情報通信システムではなく、ICT (Information & Communication Technology)。
同じ情報通信システムでも、後者は Communication が加わり、社会的な重みが増したITということになろうか…。

さて、スマートシティとは、今までの都市とは全く異なる新しい機能を持った都市のことを言うのだろうか ?
このスマートシティの定義付けがハッキリしていない。
各氏の発言や諸官庁の意見を総合して考えれば、次のように言えるのではなかろうか。

「化石燃料に対する依存度が低い電力をはじめとしたエネルギー供給網、 上下水道網、CO2の発生が少ない交通網、 通信網、 行政サービス網、 働く職場の確保、 教育・娯楽サービス網、 医療・保険サービス網、 防犯・危機管理網、 ショッピングなどの流通網、 住みやすく省エネ性の優れた住宅・建築などのインフラが効率的に整備されており、総合的に地球にやさしい都市づくり」 のこと。

そして、ハード面では、地震や津波で壊れない堅牢なデータセンターを中心に構築されるITC都市と考えて良かろう。
人間に例えれば、データセンターが頭脳であり、血管。
そして、神経に匹敵するのがインターネット。
内臓などの各器官はセンサーであり、アクチュエーターと呼ばれるエネルギーを機械的な仕事に変換するモーターやシリンダー。そのようなネットワークが過不足なく構築されている。
そして、停電が起きても機能が麻痺しないように発電や蓄電という心臓機能も持ち、ある程度自立出来る都市のこと、と考えても良かろう。

そもそも経済産業省が当初考えていたのは、あくまでも次世代のエネルギーを中心とした社会システムの再構築にあった。
図は大変分かりにくいが、従来の電力形態の外に地域の電力システムを補完させ、全体をエネルギー・マネージメントシステムとして、どのようにまとめ上げてゆけば良いかという単なる叩き台にすぎない。

次世代エネルギー.JPG

この実証事業を推進するためのモデル都市を2010年1月に公募を開始、応募のあった20都市から4都市をプロジェクト都市として選定した。
その4都市とは神奈川・横浜市、愛知・豊田市、京都・けいはんな学研都市、福岡・北九州市。
この4都市で2010年から2014年までの5ヶ年計画のマスタープランが発表され、現在進行中。

この経済産業省の動きに触発されて、上記4都市以外の日本全国各地で、より優れたスマートシティ構想がガンガン進められている。
その中心になっているのが三菱総研の理事長で東大総長顧問の小宮山宏氏が唱える「プラチナ社会のネットワーク構想」。
何しろ48都道府県のうち6割の29都道府県が参加し、市町村単位では83市町村 (うち政令市は11市)、東京23区のうち10区が参加。 なんと参加している自治体の人口が日本の総人口の2/3を占めるまでになっている。
この外に企業会員73社、特別会員39と一大勢力に…。
このプラチナネットワーク構想では、単に次世代エネルギーシステムをいかに構築するかという問題を超越し、地域をいかに活性化して行くかとか、宮城県のように災害地では如何に10ヶ年計画で復活を図って行くかという具体的な動きが目立っている。
おそらくこのプラチナ構想は、道州制などともからんで、中央官庁の枠を逸脱する動きとなって展開してゆくであろう。

このように、経済産業省を嚆矢とするエネルギー問題が中心の観念的なスマートシティと、 プラチナ構想ネットワークによる具体的なスマートシティ構想が入り混じっている。
このために、スマートシティそのものが大変に分かりにくくなっている。
私は、経産省とか国交省など中央官庁が唱えるスマートシティは、大手住宅メーカーや不動産業者の既得権擁護を前提に考えた不純なもので、小宮山氏の唱えるプラチナ構想こそ本来のスマートシティだと考えている。
中央官庁が唱えるスマートシティには、省エネ化に対して自分の身を削る具体案がなく、ポリシーもない。 HEMSなどで小手先を弄して、大手メーカーは餌だけを奪って逃げ出そうとしているように感じられる。

それでは、小宮山氏のプラチナ構想によるスマートシティネットワークとは、具体的にどんなものを目指しているのか。 同氏の基調講演とシンポジウムから見て行こう。
しかし、最初にお断りしておかなければならないことがある。 それは、残念ながらこのシンポジウムを主催した日経は大変に不親切。
如何に無料のシンポジウムだからといって、講師の基調報告のレジメが一つも用意されていない。 カラーがムリであれば、白黒の写真でよいから準備するのが主催者としての最低義務だが、それを果たしていない。 ひどいと思ったがどうしょうもない。
また、会場では一切の録音と撮影が禁止されていた。
このために、多くのデータとグラフに基づく小宮山氏のポリシーを簡単明瞭に伝えられないことが非常に残念。 読みづらい文字に付き合っていただきたい。

小宮山.JPG

氏が唱えているのは、社会の基本的な変革。
最初に起こったのは1000年以上前の農業革命。 この革命によって自ら労働しなくても搾取による不労所得で生きて行ける貴族階級が生まれた。しかし一人当たりのGDPは各国とも低く、300年前までの平均寿命は先進各国とも30才台に過ぎず40才をこえていなかった。
そして、一人当たりGDPを変えたのは工業化と言われる産業革命後だった。
この産業革命をなし得た国は一人当たりGDPを伸ばし、100年前からは先進国の平均寿命は40才後半から50才台へ近づいてきた。
そして、戦後の化石燃料を大量に使用する量産体制の確立によって人々のGDPは異常なまでに高まり、平均寿命は70才の後半から日本では80才台となってきた。
一般人が高齢化を勝ち得たということは、プラチナ社会到来以外の何物でもない。
そして、後進国と言われていたアジアをはじめとする全ての国も、産業革命と言う名の工業化を進めており、いずれもプラチナ社会になってゆく。
自動車は、人口当たり0.45〜0.5台で頭打ち。つまり国民2人に1台しか必要ではない。
12年に1回買い替えられるだけ。 車を中心とする総需要は 中国にしてもインドにしても、それほど遠くない将来に頭打ちになる。
つまり、衣・食・住・移動・情報・長寿を一般市民が手にする社会が21世紀前半に世界に行きわたる。
たしかに、現在でも飢餓が叫ばれているが、実際には世界の人々の健康を脅かしているのは「飢餓」ではなくて「肥満」。
このように、世界は「量が満たされてゆく」。としたら、次にくるものは「質」。

日本はプラチナ国。 なかでも長寿の先進国。
この日本が求める「質」とは何か。
私 (小宮山氏) は10年前にエコハウスを建てた。
Q値は残念ながら1.6WとR-2000住宅にも及ばず低い。
しかし、エコキュートを採用し、最新のCOPの高いエアコン、冷蔵庫、洗濯機を揃え、LED照明を採用した。
この外に、太陽光発電3.6kWを搭載し、ハイブリッド自動車を買った。
このため、家庭と輸送で使う、わが家のエネルギー消費量はそれまでに比べて80%も減少している。
しかし、私のエコハウスはもう古い。
今、もし新しい住宅を建てるとしたら、Q値は0.9W以上でセントラル空調換気システムを選び、太陽光発電は5kW以上を搭載したい。 そして蓄電池を兼ねて電気自動車を選ぶであろう。
そうすれば、家庭と輸送で、ほぼゼロエネルギーハウスが達成できる。

1970年における日本のエネルギーの消費量は66.2%が産業用であり、運輸15.2%、業務8.5%、家庭10.1%を含めても33.8%に過ぎなかった。
それが2010年には産業用が42.8%と激減して、運輸23.8%、業務15.1%、家庭18.3%と産業用以外が57.2%と逆転して多く消費している。
つまり、これからは家庭の省エネ化、ビルや商業施設などの省エネ化と運輸の省エネ化が大きな課題になってくる。
中でも大切なのは、住宅やビルの断熱化であり、気密化であると思う。
そのポイントを忘れてはならない。

そして、これからはますます都市化が進む。
200人に1人が農業をやるだけで良くなる。遠隔地の過疎化が進むであろう。
一方、安倍総理が言っているように、「国土の強靭化」 と言うのが大きな課題になってくる。 農地を集約化してグローバル化に耐え得るような農林水産業を育成していかなければならない。
50年前の産業化、工業化の過程で、農林水産業は補助金を与えて切り捨てられてきた。しかし、これからの孫の時代には、スマートシティと共に農林水産業の復活を果たしてゆかねばならない。とくに断熱住宅の強化ということになると、資源の面からも雇用の面、あるいは健康、バイオエネルギーという面から見ても、「良い住宅と森林再生の好循環」 は必須の要件となってくる。
そのためには、現在の農林水産物の加工に携わる人材を育てる農業学校の授業内容を、根本的に変えてゆく必要がある。 つまり、経営者としてバランスシートが読め、資金繰りとか人材育成といった「経営」が分かる人材を育成して行かねばならない。 それが今の学校教育ではなされていない。

2050年目標.JPG

そして、プラチナ社会の実現のためには、2008年のエネルギー消費量を2050年には45%へと半減以下にして行かねばならない。
その第一歩は先に上げた断熱・気密性能の優れた住宅とビルを選ぶこと。そして太陽光発電と電気自動車の蓄電によって、ムリなくこの目的を達成すること。
この行動を、全国民の合言葉にして行かねばならない。
そして、現在に比べて55%もの省エネを図る一方、現在は水力を含めても持続可能なエネルギーの比率は18%に過ぎないが、2050年には70%が再生可能なエネルギーに切り替えてゆかねばならない。
こうしてこそ、下記の資源の高い自給率が達成される。

・水資源        100%
・木材資源       100%
・食  料        70%
・エネルギー       70%
・鉱物資源        70% (主として回収資源による)

それと同時に、どうしても達成しなければならないことがある。
それは、やたらと医療費を使う医療施設を増やすことでもなければ、診断システムのICT化を大胆に進めることだけではない。
それを充実させることは、確かにスマートシティの大きな目的の1つであり、その意義を認めるのにやぶさかではない。
それよりも大切なことは、90才になってもピンピンとした元気な老人の比率を増やしてゆくこと。
現在では、90才になっても健康でピンピンしている老人の比率は11%。
72才までは元気だったが70〜80才台になると徐々に健康が悪化して行く人が70%。
そして、問題は60才台という比較的若い時期に健康を損ない、長期医療が必要な人が19%も占めていること。
日本の医療費の5%が、重症糖尿病患者の透析が占めている。

ともかく喫煙とメタボは国民の義務として自制してゆかねばならない。
医療費のやたらな増大を防ぎ、子や孫に負担をかけないヘルシーでスマートボディを維持し、「ピンピンコロリ」 こそが、日本の国民の義務として全うする気概が不可欠。
90才になってもピンピンとして、行動的な老人の比率を50%に高めるという難しい課題にトライしてこそ、「課題先進国・日本」 の取るべき姿。 
そして、ピンピンコロリと生きるためには、家の中に温度差があり、いつ心臓や脳がやられるか分からない家に住んでいてはならない。 省エネで健康な家に住む。 それこそが、スマートシティの最大の目的でなければならない。






posted by uno2013 at 12:43| Comment(0) | 展示会・シンポジウム・講演 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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