2013年03月05日

大手住宅メーカーの、驚く“設計の見える化サービス競争”


先週の日曜日に、ある施主を訪ねた。
大型の本格的なパネルによる耐震性と、デシカによる完全な空調換気システムに強い関心を寄せていただいている西関東の若い施主。
親が建てた築50年の古い家に同居していたが、片親が介護施設に入居することが内定したのを機に、家の建て替えを思い立ったもの。

築50年の古い家に案内されて、今さらながらに気密・断熱性能が悪く、耐震性の弱い木軸工法が抱えている問題の大きさを再認識させられた。
入ってレザーでフローリングの床の温度を測定したら13℃、途中で増築されたらしい低い天井の温度が17℃。天井高が9尺であれば、間違いなく室内の上下の温度差は 5〜6℃にはなっていたはず。
アルミサッシが入っているのだが、建てつけが悪くて隙間風が入るので、ガラス面には結露が生じないというから驚き。
C値で表現される相当隙間面積は、おそらく6〜7cu/uというところだろう。50パスカルで測定しょうとしても、30パスカル以上はかからないだろう…。
こんな状態だから朝の室温は6℃にもなり、布団の中に入っているのが何よりだということになる。
幼い姉弟は、隙間から入るホコリや車の排気ガスが原因と推測される喘息に冒されている。
北海道の仲間が言う、「東京の家は寒い ! 」 という代表的な見本例。

この若きご夫妻は、家の新築を思い立って まず総合住宅展示場を訪れた。 知人に住宅関係者か、有力な紹介者がいない場合の、当然な初期行動。
若きご夫妻は、都合4社を歩いている。
日本を代表するA社、B社、C社と、今でも古い外断熱を得意げに売り込んでいるD社。
期待していたD社の話は内容が陳腐。 このため、すぐ対象外に。
そして、何の気なしに入ったA社、B社、C社の3社の 見事なまでのトリックに、初期の若夫婦は知らない間に嵌ってしまっていた。

A社は、敷地調査と地盤調査から入っている。
これは、初期の時点でなさねばならない不可欠の作業。 外部の専門家に依頼するので有料が原則。
施主は、一体いくらA社に支払ったかは知らないが、A社の敷地調査報告書は41ページにも及び、法規制も完全に調べている。
それだけではない。地盤調査報告書も16ページにおよぶ完璧なもので、直下型の震度7に対応するにはどんな補強が必要で、どのような基礎構造にしたらよいかが一目で教えてくれている。
ここまできちんとした調査をやってくれているA社に対して、信頼感が湧いてくる。 この時点で、多くの初心者はA社を選ぶ可能性が高い。

これに対してB社は、住まいの参観日に参加した施主に対して、A3の大きさで10ページにもおよぶ敷地調査や法規関係を網羅した「提案書」を無料で提供。
これにはゼンリンの住宅地図以上の詳細なカラー図がついており、これを無料で提供してくれるB社に対して、心が揺さぶられる。 
おっちょこちょいの私などは、この提案があった時点でB社に決めたかもしれない。

これに対して、C社はプランで勝負をかけている。
制約された敷地条件から基本的プランは変わらないが、2つのパターン案をA3で13ページに亘って提案している。 それも、手書きの当初プランがあり、1/100のコンピューターの描いたもの。あるいは1/50のプランまでも付いている。
そして圧巻は、完成した外観の完成写真と見間違えるような、緑の植栽や豪華な自動車を配した2次元コンピューターグラフィックによる写真が2点。
それだけではない。 人の気配が感じられ、カラーコーデネィトされたLDKの内部の2次元コンピューターグラフィックが2枚と、居室の立体写真モドキも2枚付いている。
つまり、単なる平面的なプラン図ではなく、消費者の生活そのものが立体的に2次元の世界で実感出来るように、“見える化”されている。

住宅の“見える化”では、大きく分けて2つの潮流がある。
一つは、単なる立面図ではなく、カラーコーデネィトされた空間が実体験出来るような3次元コンピューターグラフィックを開発しょうという動き。 
20年前にパナソニック……当時の松下電工がいち早くこのテーマに取り組んだ。 そして、それを実感してもらう場所として、当時は特別な装置付きの部屋が必要だった。 吉祥寺駅前の高価な場所を借りて、消費者に3次元立体的空間とインテリアコーデネィトを実感してもらい、売上の促進に結びつけようと努力した。
しかし、当時の3次元コンピューターグラフィックの技術レベルが低く、カネがかかる割には思ったような効果が出なかった。 そして、他の大手住宅メーカーも、3Dによるコンピューターによる空間の“見える化”にはそれほど熱心ではなく、そのまま立ち消えてしまった。

しかし、先週の日曜日に拝見したC社の2次元コンピューターグラフィックには、意表を突かれた。
画像として動く3次元でなくても良かったのだ。2次元で十分に訴える力を持っている。
2次元で、ここまで実用化されてきているとは知らなかった。
地場ビルダーは、大至急にこの2Dのコンピューターグラフィックを身につけた技術者とシステムを用意しなければならない。 でないと、如何に気密性や省エネの根幹的な技術を身につけていても、それ以前のカッコ良い表現力に多くの消費者が靡き、大手の術中に嵌ってしまう怖れが大きい…。
C社の2Dのコンピューターグラフィックの実物をカラーでお見せしたいのだが、同社の了解を取っていないので残念ながら掲載はムリ。
関心のある向きは、展示場へ足を運んで、是非とも実物を見ていただきたい。 おそらく、私以上に驚かれるはず…。

しかし、ここで強調しておきたいことがある。
それは、高気密・高断熱住宅で、セントラル空調換気が持つソフトで優しい快適さは、いかに2次元や3次元コンピューターグラフィックを使っても、絶対に表現出来ないということ。
とくに夏期の爽やかさには、すべての人々が異口同音に 「上高地か軽井沢に来たみたい !」 という感動を与えてくれる。
松下電工が開発した3次元の実空間に近い体験室を設けるよりも、当時はR-2000住宅のモデルハウスを建て、その玄関のドアを閉めたモデルハウスに1時間以上滞留して頂き、言葉で表現できない快適さを実感して頂くことが、はるかに効果的だった。
本当の快適さは見た目ではない。 空気の快適さは3次元ソフトでは表現できない。 
まして除加湿をコントロール出来、一切の風を感じない快適さは、やはり体験棟で一晩過ごして頂くのが最良。 2次元のコンピューターグラフィックが表現できるのは、肝心の快適性ではなく、見た目のカッコよさだけ。

もう一つの“見える化”は、太陽光の発電状況とか、家電の使用状況をモニター画面で見せるHEMS(Home Energy Management System ・ヘムスと言う名の家庭用エネルギー管理システム) として、最近では政府が音頭をとり、補助金付きで騒がれているもの。
見える化の出来るもとして、@電気の使用量 Aガス使用量 B水の使用量 Cエコキュートの出湯量 D太陽光の発電量 E燃料電池の発電量 F蓄電池の残量、などが挙げられている。
これらを、10万円近いモニターで見える化すれば、ケチケチ心が動員されて、省エネ化になるだろうという発想。
しかし、私はクーラーを使いすぎているからとケチケチ心を発揮して電源を切ったり、不快なまでに設定温度を上げることで本当の省エネ化が図られるとは絶対に考えない。
必要なのは、空調・換気・給湯・照明・調理・コンピューターやゲーム・その他の家電、に年間を通じていくらのエネルギーが使われているかのデータを得ること。
その年間データが得られれば、対処方法は自ずと分かってくる。10万円もするモニターなどは必要ない。
分電盤の配線に工夫を凝らし、それぞれの使用電力を計測し、それをネットにまとめる作業を、住宅業者は消費者の協力を得て、全部の新築住宅に義務化すべし。

そうすれば、口先だけの各社の“自称・省エネ住宅”は、実態数値に呆れられて淘汰されてゆくであろうし、カッコ良いだけで省エネが進んでいない大手メーカーの“HEMSなどによるスマートハウス”も、影をひそめてゆくであろう。

それにしても、大手住宅メーカーの消費者誘導作戦の見事さには、改めて驚かされた。
地場ビルダーは独りよがりで威張っているだけだと、消費者から見放される怖れを痛感させられた。
posted by uno2013 at 06:36| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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