2013年02月20日

I ジョイストを壁に使う!!  A&Mカーベントリー社の挑戦!! (上)


1月31日に、大変に面白い現場を見た。
感動したので5間の一体パネルの写真だけを、3日のネットフォーラム欄に公開した。
そしたら、いくつかの問い合わせがあったが、詳細内容の報告は今日まで待ってもらった。

この現場は、枠組壁工法 (ツーバィフォー工法) に携わっている者にとっては6つの側面で画期的な内容を持っている。 どこまでも実験的チャレンジの域を脱していない。企業化には需要面や設備面でまだ問題がある。だが、このチャレンジには、実に多くの面で考えさせられるものがある。
その6つの側面とは、以下。

●TJI (あるいはスーパー・ジョイスト) と呼ばれる2階床根太材を、日本で最初に民間の住宅の外壁
に正式に採用した。
●外壁の壁パネルの長さが5間 (9.1メートル) から6間 (11メートル) と、本格的な一体パネルで、
耐震性が飛びぬけて高い。
●外壁の内外に9ミリのOSBを張っており、実験室のデータでは7.7倍の信じられない壁倍率が出て
いる。(とりあえずの現場では5.0倍として計算していたが…)
●外壁や床は2フィートモジュール (2尺、610ミリ) で、OSB、石膏ボードとも4×8尺物を横張りして
いるので、熱橋となる木材の部分が8%減る。また38ミリのスタッドが9ミリのウェブになることで
更に8%の熱橋が省かれるので、計16%が外壁で省エネ化が図られている。
●本格的な仕様でやるならば、熱損失係数 (Q値) は0.64W/u 、相当隙間面積 (C値) は
0.17cu/uと抜群に良く、ほぼゼロエネルギーハウスと呼べる。
●本格的なドライウォール工法を採用している。

今回の報告は、主としてツーバィフォー関係のプロを対象にしたもので、一般消費者を対象にしたものではありません。このため、かなり専門的な記述になることをあらかじめ了解いただきたい。

まず、I ジョイスト。
アメリカでは、210とか212の無垢の根太を採用して事例は30%を切っている。
変わって圧倒的な普及を見せているのは、エンジニアウッドと呼ばれるTJI とかスーパー・ジョイスト。TJI (トラス・ジョイスト・I ビーム) は、米ウェアハウザーの登録商品名で、上下のフランジにはLVLを採用し、ウェブにOSBを採用しているもの。日本では大鹿振興が輸入元。
このLVLのフランジに変えて、無垢の203材などを採用したものをスーパー・ジョイストと呼称していた。また、このスーパー・ジョイストには203材を横に使ったものとタテに使ったものとがあった。しかし、最近はLVLを採用したものも含めてスーパー・ジョイストと総称している場合が多い。
TJI に対するI ジョイストの総称と考えてよい。

北米で210、212の床根太に変わって、主として212のI ジョイストが圧倒的な主力を占めるようになったのには、2つの大きな理由がある。
1つは、210とか212の根太材は、ピッチが16インチ (40.6センチ) が主であった。ところがフランジに強度を持つI ジョイストの場合は、ピッチが2フィート (24インチ、61センチ) でよい。したがって、若干材料費が高くても労賃を加味すれば安くなる。
もう1つは、212のセイのI ジョイストだと、支点から1800ミリ離せば、ウェブに200φの空調ダクトを通す穴を空けることが出来る。このため、市販されているギャングネールを使った平行弦トラスとともに、エンジニアウッドが床根太の主流になってきた。 つまり、セントラル空調換気システムが常識の北米では、I ジョイストの採用が大前提になってきたということ。
このI ジョイストを、床根太だけでなく屋根タルキに使おうと考えるのは当然のなりゆき。
それだけでなく、北米のみではなくヨーロッパでもこのI ジョイストを外壁に使おうという言う動きが目立ってきている。

今、ヨーロッパで木造の外壁パネルで、注目されている動きが2つある。
1つは、210の厚さのI ジョイストを主として住宅の外壁に活用して、高い断熱性能を確保してゆこうという運動。
もう1つは、東大の安藤先生が中心になって注力されているCLT (クロス・ラミネィテッド・ティンバー)の普及活動。 
このCLTはオーストリアが発祥地。2センチ厚の無垢板の繊維方向を交互に、5層以上を接着剤ないしはダボで繋いで、木造のPC版のように成形して壁や床材として使用するもの。
オーストリアの代表的なKLH社では、長さ16.5メートル、幅2.95メートル、厚20センチの一体型の木質PC版の成形が可能に。このため、ヨーロッパ各国では8階建とか10階建の木質構造の建築物が出現してきている。しかし、日本では特認を取っていないので、現時点では使えない。
しかし、木質構造材が中高層建築物への本格的進出する先兵として 注目されている。

この動きに触発されて、昨年から日本でも国産スギを使った5階建のCLTの実験も始まっている。
だが、まだまだ幼児期の段階に過ぎず、作成可能なパネルは余りにも小さすぎて実用にはほど遠く、実に情けない代物にすぎない。
しかし、日本の多くの集成材メーカーは、国産スギを使ったCLTへのエントリーに意欲を見せており、安藤先生の予測ではCLTのJAS化は予想以上に早いのではないかと言う。
もちろんJAS化されるということは、国産スギの基準だけが書き込まれるということではない。米ツガ材もスプロースも、北欧材も書きこまれる。 そして、この1〜2年以内にオープンな工法として、一般化されると考えて間違いないようだ。
こうした中高層ビル用のCLTとは別に、日本では以前からTHOMA社のダボ構造によるピアウッドの17センチの壁厚で、自然の住まい社がなんと7倍の壁倍率で認定を得て 実績を積んできている。
この壁構造だと単に地震に強いだけでなく、おそらく3メートルの津波に襲われても倒壊を免れるだろう。 価格は高いが、実に心強い木質構造がすでに日本の住宅界に存在している。

Iジョイストの壁図.JPG

このピアウッドの、有力な対抗馬になり得ると予想出来るのがI ジョイストの壁。
A&Mカーベントリー社が描いた外壁の姿図が上。
さて、ここで問題になるのがこの姿図で、如何にして確認申請をパスさせるかという具体策。
ご案内の通り、ツーバィフォー工法は 告示56でその内容が規定されていた。
しかし、2000年の建築基準法の改定で、1540と1541によって、構造計算をすれば告示内容以外の建築物が可能になってきた。 施行令のチャートに基づいて計算すれば、必ずしもダイヤフラムの原則に基づいていなくても建築が可能になってきた。
しかし、その構造計算が、1540と1541に適合しているかどうかは、指定された認定機関で判定してもらわねばならない。
本来は高層建築物の「適合判定」が、軒高10メートル以内のちっぽけな木造にも適応されている。
それが嫌なら、37条の特認を取らねばならない。
A&M社は、直ぐに特認がとれるほどの実力を備えていない。 このため、今までI ジョイストの壁での3棟に関しては、全て「適合判定」で、地方自治体の確認を得てきている。
つまり、日本でI ジョイストの壁で確認をとったのはたった3棟しかなく、その3棟目の現場をなんとか見学できたという次第。

地価の高い東京や横浜を中心に住宅業をやってきて私は、原則として206以上の外壁には賛成できない。
外壁を厚くすると、それだけ居住空間が狭くなる事例が大半だった。どのプランでも、建遮率と容積率に悩まされた。したがって外壁厚は原則として206で打ち止めに…。
「外壁にカネをかけるのなら、サッシにカネをかけるべし」 というのがモットー。
しかし、このI ジョイストの場合は、210の壁厚を208にしても、ウェブのOSBが5センチ短くなるだけ。
206にするにした所で、OSBが10センチ短くなるだけのことで、構造体の価格にはほとんど影響がない。
もちろん、それだけ断熱材の厚さが減るから、210に比べて206の方が相対的に安くはなるが、驚くほどの数値ではない。
だとしたら、I ジョイストの外壁は、それほど建遮率や容積率の影響力が少ない地域での限定商品にしたら良い。そのように割り切るべき。

そして、A&M社の考えで面白いのは外壁の内外の両面にOSBを張っていること。
210のスタッドだと捻れの心配はないが、水平力をOSBのウェブで支えるとなると面全体の捻れが心配になってくる。このため、外壁面だけでなく内壁面にも9ミリのOSBを張った。 このため、水平力の耐震テストを行ったら7.7倍もの壁倍率があるとのデータが得られた。
しかし、7倍で計算すると、アンカーボルトや土台、2階の根太のめり込み強度などが大きく問題になってくる。このため、確認申請では壁倍率を5.0倍で申請している。
そして、両面をOSBで固めて、工場でスタッド内空隙にアイシノンを発泡させ、注入穴を完全に塞いで断熱と気密を確保している。
このウレタン注入機の性能の良いものを、新規にアメリカから購入することにしている。

壁組.JPG

ここで問題になるのは、両面にOSBを張るため、5間とか6間とかと長い壁を裏返しにしなければならないこと。短い2間半とか3間の壁だと裏返すのは容易。しかし、その2倍以上の長い壁となると、裏返すのはことのほか面倒。
上の写真は上部がカットされているので見えないが、当然のことながら走行クレーンが付いている。

さて、同社か一体壁に拘るのは、シアトルに今でも住宅会社を持ち、現地の駐在員が細々ながら分譲住宅をこなしており、現地での資材購入や売れ筋の「ナマの情報」が常に入手出来るから。
アメリカでは、一体壁以外のパネルは造らない。長い壁になればなるほど継ぎ目が多くなり、黙っていても壁の延長は長くならざるを得ない。そして、構造的に脆くなる。
耐力壁は一体で起こしてこそ価値がある。
この原則は、今でもアメリカでは綿々として受け継がれている。
日本のパネル化は、ミサワホームの小さなパネルからスタートしたので、現場でパネルを継ぐことの怖さを 消費者も業者も忘れている。
A&M社では、道路と敷地に問題がなければ、15メートルの長いパネルでも一体加工したものを運ぶという。
日本全国に立地する多くのパネル工場は、是非ともA&M社の行動を 「頂門の一針」 として受け止め、真似していただきたい。そのことによって、日本の住宅の耐震性がどれほど改善されることか…。

それと、もう一つ絶対にA&M社を真似していただきたいのは、吹き抜け空間のタテ枠は必ず通しの206でバルーンフレーミングにすること。
1540、1541になってから、構造計算によって通し柱のバルーンフレーミングによらなくても確認申請が日本では降りるようになってきた。その結果、実に危ない吹き抜け空間が増えてきている。
しかし、アメリカの現実を常に見ている同社は、1間以上の全ての吹き抜け空間は、206以上のバルーンフレーミングで仕上げている。自然の住まい社のCLTも、階段室などの吹き抜け空間は通しの長いパネルを使っている。これが世界の常識。
それなのに、地震国日本ではパルンフレーミングではない吹き抜け空間が、2000年の法改正以降に出現してきている。悪いのは、法改正をミスリードした面々。 だが、どんなに立派なことを言う住宅会社であっても、吹き抜け空間をバルーンフレーミングで構成していない会社は、私は絶対に信用しないことにしている。
これは、杉山英男先生の遺言でもある。
「構造計算を、バカの一つ覚えで盲信している人の気持が私には分からない。実際にその住宅が安全であるかどうかを知っているのはベテランの大工さん。バルーンフレーミングを無視している構造設計家は、アメリカのベテランの大工さんから学ぶべき!!」。

この言葉を忠実に守っているA&Mカーベントリー社を、私は誰よりも信用している。




posted by uno2013 at 07:49| Comment(1) | ゼロエネルギーハウス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
とけい
Posted by 人気 腕時計 at 2013年07月29日 19:27
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