2013年01月30日

一条工務店のイノベーションとは…  i-smart 対策 (2)


一条工務店が、昨年i-smart を発表して以来、世界の最先端を走っていると考えられていたドイツのパッシブハウス研究所が提唱してきた 「パッシブハウス」 も、経産省・国交省が音頭を取って推進している 「ゼロ・エネルギーハウスの補助金事業」 も、消費者の目線から見るならば大変に色褪せたものになってしまった。
まして、気密性能を無視し、Q値1.9Wで思考が停止し、大手住宅メーカーの言いなりなっている次世代省エネ基準改定作業などは、役に立たないとビルダーや消費者の意識の外に放り出されてしまった。
先進的な消費者の目線では、次世代省エネ作業は学会を巻き込んだ 「単なる茶番劇」 としてしか捉えられていない。  騒いでいるのは大手の住宅メーカーと、彼らの広告を欲しがっている一部の報道陣だけ。 

つまり、今まで役所や学会がそれなりに信用されていたのは、最新の情報を持っており、技術的な面でも発信力があったから…。
しかし、最近の大手住宅メーカーとお役所と学会は、二言目には 「スマートハウス」 と、○○の一つ覚えしか発言していない。 それ以上の情報発信力が見当たらない。
しかも、「民間の消費者は何も知らないから、私どもが教えて上げます」 との思い上がった口調…。 つまり、彼らの情報と技術のお里が知れてきた。いまどきの消費者は、「スマートハウス」などという誤魔化し情報に誰一人として本気に耳を傾けない。

福島の原発事故で日本の消費者は、役所と学会というものが どれほどいい加減なものであるかを学習した。 そして、信用されていないのは単に原子力学会や地震学会だけではない。
住宅に関係する諸学会に対する不信感の根強さを、心していただきたい。 大学教授だからといって、チヤホヤする時代は完全に終わった。

さて、本論の一条工務店のイノベーションに移ろう。
まず、特徴的な第一点は、今まで学問的にもっともらしく議論されてきていたT地域、U地域、V地域、W地域と言う地域差を、i-smart は完全に取り払ったこと。 良いとか悪いとかではない。 i-smart という商品は、沖縄以外は全国共通の仕様で供給されている。
その中でも際立っているのは、高性能住宅における 「気密性能」 の大切さ。
この重要性を一条工務店が全面的に認めて、公表数値を0.6cu/uと発表。 
この英断は高く評価したい。 なにしろ、カナダのR-2000住宅の0.9cu/uを大幅に上回った。 ツーバィフォーの大手であった三井ホーム、地所ホーム、東急ホーム、スウェーデンハウスがR-2000住宅の求めた0.9cu/uの気密性能をコンスタントに達成出来ず、R-2000住宅から撤退した。
このことを考えると、プレハブで0.6cu/uを公言した一条工務店の勇気に対して、「お見事」 と、消費者目線で万雷の拍手を送りたい。
ただ、ドイツのパッシブハウスが0.3cu/u以上を求めているが、この学術的な根拠が示されていない。したがって、当面は0.6cu/uで走るしかないと私は考えている…。

この一条工務店の大英断で、怪しくなってきたのが次世代省エネ基準。
一昨年、どうした訳かは知らないが、諸先生方は次世代基準から肝心の気密性能を外した。 その除外理由をS氏は 「新建ハウジング」 紙上で述べていたが、残念ながら学問的に納得出来るレベルの内容ではなかった。
巷間噂されていたのは、「大手住宅メーカーの意向を反映して、国交省が学者に圧力をかけ、気密性能を取り払ってしまった」 というもの。 これを信ずるわけにはゆかないが、福島原発の安全性と同程度の後味の悪さが残り、今でも多くの消費者に噂が語り継がれているのは、ムベなるかなである。
それだけに、一条工務店の0.6cu/uという発表は衝撃的。

つまり、高気密・高断熱の 「超高性能住宅」 と名乗る以上は、これからは0.6cu/u以上でないと、先行する消費者は認めてくれないというになった。
単に寒冷地の地場ビルダーだけでなく、関東、中部、関西、あるいは中国、四国、九州の地場ビルダーにも、一斉にこの基準の網がかかってくる。
しかも、口先で言う 「呼称性能」 ではなく、「完成検査での気密テストの結果」 が求められるようになってこよう。
この全棟気密テストの実施が、大手プレハブメーカーを含めて、全ての住宅業者の義務となることが考えられる。 それこそが、「消費者志向型の住宅産業」 の誕生と言える。 絶対に、そうあらねばならない。

次は、熱損失係数。
一条工務店は、i-smart のQ値は0.82Wと自称している。
この性能は、主として3つの要因で支えられている。
@ 206の外壁に140ミリのEPSを充填し、外側に50ミリのEPSを外張り。
190ミリ厚の断熱層を確保し、外壁のU値を0.2Wとしている。
A サッシはPVCで、ペアガラスのアルゴンガス入り。
したがってサッシそのもののU値は1.5W程度。これにハニカムシェードが付いているので、完全にシェードを降ろした状態だとU値を1.0Wでカウントすることが可能。 しかし、昼間はシェードを降ろすと暗くなるし、寒い夜間はシェードを完全に下まで降ろすとガラスの下部に結露が生じる。このため、下部を10センチ程度空けて生活している事例が多い。
このため、一条では開口部の性能を1.3Wと計算しているようだが、私は1.3Wでも甘すぎるように感じる。
B ロスガード90を採用し、換気の熱回収を90%で計算しているよう。
しかし、浴室、トイレからの排気は熱交換されずに間欠運転でそのまま排出。このため、実質的な熱回収率は80%程度と推測される。

こうした諸要因を考えると、Q値は8.2Wではなく、限りなく0.9Wに近い0.87W程度ではないかというのが私の推測値。これはどこまでも推測値。
しかし、一条工務店は、T地域からW地域まで、全て実質0.87WのQ値で対応している。 R-2000住宅のように、W地域だから1.4Wで良いという訳にはゆかなくなっている。
つまり、国交省が次世代基準の数値をどのように弄ろうとも、最先端の消費者と地場ビルダーにとっては全く関係がなくなっている。
大手プレハブメーカーは、国交省の庇護の基で改定された基準でマスターベーションやって威張っておれば済むが、一条工務店の攻勢をモロに受ける地場ビルダー……中でも高性能住宅を目指す地場ビルダーにとっては、Q値0.87Wが達成しなければならない最低限の必須条件になってきている。

この条件が如何に厳しいものであるかは、北海道無暖冷房住宅研究会 (絵内正道会長) が、昨年から始めた札幌での5棟の実測住宅のQ値からも推定できる。
5棟のQ値は、0.72W、0.87W、0.95W、1.0W、1.12W。 
つまり、0.87Wを上回っているのは2棟しかなく、3棟は i-smart を下回っている。 もちろんこの実測データ取りは、優れた性能住宅に偏るのではなく、札幌の標準的な高性能住宅全体のデータを取るのが目的。 したがって、0.87W以上の住宅は2棟と限られているが、札幌圏では全て0.87W以上に揃えることは困難な仕事ではない。
しかし全国で、「一条工務店と対等の高性能住宅を造れます」 と豪語するには 0.87WのQ値が不可欠に。
北海道では断熱材やサッシ、熱交換換気など、必要な建材、部品や設備が揃ってきているし、価格もこなれてきている。
だが、内地ではまだまだ量的にも質的にも、あるいは価格的にも不十分。 i-smart 対抗商品を生み、育てて行くのは、時間的にも技術的にも容易でないことが分かってもらえよう。

なお、政府はお馴染みのQ値 (総熱損失量/延床面積) に変えて、新しくUA値 (総熱損失量/外皮表面積) の採用を決めた。
世界的にQ値が使われてきており、日本でもQ値が幅広く使われてきた。
それが、何の目的でUA値に変えねばならなかったのかの意図が私にはよく理解できない。 つまり、総熱損失量を今までの延床面積ではなく外皮表面積で割ることのメリット。 おそらく全国のビルダー仲間も消費者も同じ疑問を持っていることだろう。
そして、外国と比較する時は、どうしてもQ値とならざるを得ないはず。
となれば、当分Q値とUA値の併用ということになろう。
UA値に変えられることで文句を言う訳ではないが、日本の役人とか学者は、どちらかというと 「お上意識」 で、上から消費者や民間企業を 「見降ろす」 意識が強すぎるように感じられる。 民間が手間暇かかって困ることなどは、これっぽっちも考慮してくれない。

これから、地場ビルダーや消費者に強いインパクトを与えて行くのは、コンビニのセブンイレブン、宅急便のクロネコヤマトと同じように、民間の一条工務店のイノベーションであって、政府や学者でないことだけは強く自覚していただきたい。

posted by uno2013 at 09:01| Comment(0) | ゼロエネルギーハウス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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