2015年01月30日

ローソンからサントリーへ 新浪剛史は経営者として本物?



吉岡秀子著 「プロ経営者 新浪剛史」 (朝日新聞出版 1400円+税)

新浪剛史.JPG

著者の吉岡女史には 「コンビニ・ジャーナリスト」 という肩書が付いているらしい。 
私も女史が書いた 「セブンイレブンおでん部会」 (朝日新書) や、女史が構成を手伝ったと言われている 鈴木敏文著 「変わる力 セブンイレブン的思考法」 (朝日新書) を読んでいる。 なかなか達者な筆致で読ませる。
その筆者が、今から5年前の2010年2月に、「砂漠に梨をつくるローソン改革 2940日」 という本を出版していたとは知らなかった。 

2001年に累積赤字でアップアップしていたローソンを、2000億円余を出資してダイエーから入手した三菱商事。 ローソンの再建は、三菱商事の最重要テーマの一つとなった。 そして2002年に、三菱商事から社長としてローソンへ派遣されたのが43歳の若輩・新浪剛史氏。
なぜ、コンビニ業界のド素人だった新浪が選ばれたのか?
新浪は36歳の時、社内起業として 「病院給食事業」 を立ち上げることを提案して、採用されている。 そして、年収10億円程度の給食会社を買収し、当初は副社長の肩書で新事業に飛び込んで大活躍‥‥。
コックなどの働く人に高いモチベーションを持ってもらうために、本場フランス視察に連れていったり、おしゃれなユニフォームなどを作ったり‥‥。
そして、自身は基本メニューの徹底した研究開発に取り組んだ。 
その結果、「レストランではなく、毎日通ってもらう食堂の場合は、《コメ》や《みそ汁》といった基本メニューをおいしくすることが絶対条件だ」 ということが分かった。 
つまり、沢山のメニューを用意するのではなく、基本におカネをかける。 そのことに対して商事の了解が得られ、良いコメとダシの入手に全力を上げることが出来た。 そして、「今日もおいしく炊いてね‥‥」と炊飯係にお願いして回った。
その結果、常連客から、すぐに 「ご飯がおいしい」 という反応が出て客が増え、店は活気づき、従業員が張りきった。 このため、5年後には年商は10倍の100億円になった。 
その新浪氏の仕事ぶりを、上司は正しく見てくれていた。

こうして、「3年以内に黒字化を果たせ」 という三菱商事の社長の激を受けて、ローソンにおける新浪体制はスタート。 当初は、「2〜3年以内に新浪は商事に帰ることになるさ‥‥」と多くの社員が傍観を決め込んでいた。 しかし、ローソンが次第に息を吹き返すにしたがって、第三者的な批判は薄れていった。 
その新社長に、毎月1度のペースで取材していた筆者が、新社長就任8年目に出版したのが前記の 「砂漠に梨をつくる‥‥」 という著書。 
この著を今回は全面的に改訂したと言っているが、読んでいて新浪氏の事業に対する計画性がさっぱり伝わってこない。 部分的なポリシーとか対応力は分かるが、事業に対する計画性が理解できないまま‥‥。
それよりも理解しにくいのは、経営者としての新浪氏の手腕。 
なにしろ、コンビニ業界には 「神様」 と仰がれるセブンイレブンの鈴木敏文氏が鎮座している世界。 ド素人の新浪氏には、「何でもいいから、業界の常識に挑戦するために走り出せ!」 と叫ぶしかなかったよう‥‥。 
たしかに、新浪はあらゆる常識に挑戦し、それなりの成果を上げている。 
しかし、過去の実績に囚われず、常識を否定して常に新しい路線を敷いてくるセブンイレブンに対して、どれだけ経営として有効性があったであろうか‥‥。

            2002年売上高 (%)   2007年売上高 (%)   2013年売上高 (%)
・セブンイレブン   2.21兆円 (31.7)   2.57兆円 (34.4)   3.78兆円 (38.3) 
・ローソン       1.29   (18.5)    1.42   (18.9)    1.95   (19.7)
・ファミリーマート   0.95   (13.4)    1.12   (15.0)    1.72   (17.4)
・そ の 他       2.54   (36.4)    2.38   (31.7)    2.42   (24.6)

上記の数字は、新浪氏がローソンの社長に就任した2002年と、それから5年間たった2007年。 さらには2013年の、3大コンビニ店の売上高と、全コンビニ界の売上高に占める比率 (%) を示したもの。
たしかにローソンは、02年の1.29兆円から07年の1.42兆円、13年の1.95兆円と、11年間に51.2%も売上を伸ばしている。 そして、マーケットシェアも02年の18.5%から13年の19.7%へ、1.2%もシェアを伸ばしている。
この数値だけを見ると、さすがは新浪氏はたいした経営者だと考えたくなる。
しかし、同じ時期にセブンイレブンは11年間で売上が2.21兆円から3.78兆円へと71%も伸ばして、ローソンの51.2%をはるかに凌駕している。 そして、マーケットシェアも11年間で6.6%も伸びている。 ローソンの1.2%の伸びなどは、眼中にない。
それだけではない。 ファミリーマートがなんと81.1%も売上を伸ばし、ローソンの2位の座を完全に狙える位置にまでシェアをアップさせてきている。 マーケットシェアも、11年間で4.0%も伸ばしている。
つまり、サークルKサンクス以下の中小コンビニのシェアが、この11年間に36.4%から24.6%へと11.8%も縮小している。 
コンビニ業界は、3大企業による寡占化の時代を迎えようとしている前夜。
その中で、ローソンの伸びが最も低く、やっとこさ2位の座をギリギリの差で守っているにすぎないありさま。

この著書は、こうした鳥瞰視した視点が余りにも足りない。
さらに付け加えるなら、2014年の時点で、セブンイレブンは国内に1万7009店の店を持っているほかに、アメリカに8139店、タイに7965店、韓国7128店、台湾5025店、中国2017店、メキシコ1730店、マレーシア1677店、フィリピン1169店という4桁台の店を出している。 そして進出している国は15ヶ国で、3万7201店。 
国内と合わせるとなんと5万4210店という巨大マーケットを形成している。
そのことを知らなかった私は、5年前にスウェーデンでセブンイレブンの看板を見て、腰を抜かしそうになった。 ドイツやフランスなどにはまだ出店していないが、人工過疎のスウェーデン、デンマーク、ノルウェーの3ヶ国だけで540店も出店している。
いいですか、同時期にローソンの国内の店舗数は1万1606店で、中国387店、インドネシア61店、タイ29店、ハワイ4店、海外計が483店。 セブンイレブンの北欧3ヶ国の店舗数よりも劣る出店数。 それで、グローバル化とかなんとか叫んでいるのだから、片腹が痛くなってくる。

私は、ローソンの悪口を言うためにこのブログを書いているのではない。
ローソンにも、大いに頑張って頂きたいと願う。 
そして、新浪氏から社長のバトンを受継いだのは、あのユニクロの柳井社長から一時社長を任されたことがある玉塚氏。 本物の経営者と言えない新浪氏は、「東北大震災の時、玉塚氏を中心とするチームが、よく頑張ってくれた。 このチームならば、安心して企業が任せられると確信した」 と語っているが、それが本音かどうか‥‥。
というのは、今日1月29日の日経の朝刊に、「100円ローソン260店閉鎖」 「小型スーパー・ローソンマート39店も15年中に閉鎖へ」 という記事が出ている。
新浪氏がショップ99に出資して 2008年にローソンストアという名の子会社として、全国に1117店を展開しているが、そのうちの100店の直営店を閉鎖して、ドラック併設コンビニなどへの模様替えをするらしい。 
業界の常識に挑戦した新浪式イノベーションは、新しい社長の手によって部分的に修正を加えられてゆくことは必死。

そんな新しい動きが読めるので、5年前に書かれた新浪賛歌のこの著書には、どうしても疑問符が付いて回る。 ローソンを再生させたという一方的なヨイショで、サントリーにふさわしいプロの経営者だと奉っている内容には賛同できない。 ローソン程度の活躍で、氏を優れた経営者として評価することは、絶対にしてはならない‥‥。
たしかに、ポリシーなどには賛同する面は多いが、プロの経営者にふさわしいと言えるのは、やはりサントリーの指導者として、輝かしい業績を上げた後になろう。 
経営者としての本当の評価は、10年後にならないと出来かねるだろう。   


posted by uno2013 at 08:37| Comment(1) | 書評(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月25日

植物工場先行国・オランダに、日本は追いつけるのか !?



古西豊樹監修 「植物工場のきほん」 (新光社 1600円+税)

植物.JPG

「植物工場」 という言葉を知っている人は多いと思う。
しかし、植物工場で生産されるのはホーレンソウやレタスなどの葉っぱ野菜が主流。 
したがって、サラダ好きの人間にとっては大歓迎だろうが、私のような 「根菜大好き人間」 にとっては、残念ながらほとんど魅力がなく、関心がなかった。 
つまり私は、今年も家庭菜園に力を入れ、各種の芋類をはじめ、ニンジン、玉ねぎ、ダイコンやカブなどの栽培に力を入れるはず。 葉っぱ野菜も、若干は栽培するが‥‥。

ところが、半年前にNHKテレビが、「オランダから技術導入した最新鋭の 《太陽光型植物工場》 が、北京郊外に合計1000ヘクタール (約300万坪) も設置され、イチゴなどの生産を開始しはじめた」 と伝えていた。
そして、この太陽光型植物工場は、単に中国だけでなく、韓国、ベトナムやマレーシア、台湾、タイなどのアジア各国へも進出し、10〜20ヘクタール (約3〜6万坪) の工場が稼働していると言うではないか。
このテレビ番組を見て私は慌てた。 日本が植物工場ビジネスで大きく後れをとっているのではないかと懸念されたから‥‥。 
早速書店へ走り、「植物工場ビジネス」 の関連本や矢野経済研究所のリポートなどを入手した。
そして、私が想像していた以上に植物工場ビジネスは面白く、若い人が新規に参入したくなるだけの魅力を備えていることを知った。 
もちろん、植物工場の建築そのものにも関心があったのだが‥‥。 
そんなわけで、機会があったら是非ともこの欄で取上げたいと考えていた。
たまたま、上記の著書を図書館で見かけたので借りてきた。

この著は11章からなっており、「人工光型植物工場」 と 「太陽光型植物工場」 の違いをはじめ、植物の生理の基本をはじめ、植物工場の設備投資の内容、生産コストの比較と将来の見通しなどを分かりやすく説明してくれている。
と同時に、植物工場の必須投入資源である光、CO2、水、無機肥料、温冷熱とヒートポンプ、種苗についても個別に項目を設けて説明してくれている。 そのほかに、植物工場で先行している多くの企業の実例や、諸外国の歴史にも触れている。
実質的な執筆は、長年 農業関係を幅広く取材してきたライターやカメラマン。 
ただし、私の最大の関心事は、植物工場で先進国のオランダに日本は追いつけるかどうかという、技術力とイノベーションに集約されている。 このため、紹介するのはこの著書の一部に過ぎないことを、あらかじめお断りしておきたい。
関心のある向きは、全ページを熟読されることがお薦め‥‥。

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さて、最初に知らねばならないことがある。
植物工場のことを、Plant Factory という。 これは和製英語だが、このPlant Factory には
「太陽光型」 (写真上) と 「人工光型」 の2つがある、ということ。
太陽光型というのは、基本的に露地栽培やハウス栽培と同じで、太陽の光で光合成を行い、人工光型は蛍光灯やLEDなどで光合成を行う。 
両者の間には、明らかな差がある。

そして、太陽光型は、その施設によって4つに分類される。
@何の施設もないもの                              露地栽培
A基本的な換気・保温カーテン・暖房施設だけを備えたもの         簡易被覆施設
B中級な空気攪拌扇・遮光カーテン・灌水施設を備えたもの      環境制御・土耕施設
C養液栽培・CO2施設・気化冷房・ヒートポンプ・補光灯を完備   環境制御・養液栽培施設
このうち、AとBしか備えていないものをハウス栽培と言い、太陽光工場と呼べるのはA〜Cのすべての機器と施設を備えたものを指す。

この太陽光型が最初に開発されたのは1960年代のオーストラリアで、1970年代からオランダが施設園芸の大型化・自動化・情報化を進めて、今では国内だけで約1万ヘクタール (約3000万坪) の太陽光型植物工場を持っており、そのプラントの輸出先はアメリカ、カナダ、オーストラリア、中近東、中国をはじめとした東南アジアに及び、世界最大の太陽光型植物工場の輸出国になってきている。
一方、日本では太陽光型植物工場と呼べるのは、たった数百ヘクタールで、オランダの数パーセントでしかなく、中国などの後塵を拝するようになっている。 部外者の私が心配したことが、現実に起こっている。
太陽光型工場での生産に適した野菜は、「強い光を好み、栽培期間が数ヶ月から1年間におよぶ植物だ」 と言われている。
具体的には、トマト、ピーマン、キュウリ、イチゴなどの果菜類。 このほか、ブルーベリー、ビワ、マンゴウ、ブドウなどの果樹も対象になる。 さらにはハーブ類や大型のコチョウランなどの花卉も有力。 そしてこれからは、薬用植物のデンドロビウム、オタネニンジン、サフラン、センブリなとも対象になってくるという。
しかし、太陽光型には、日射量や季節、昼夜の変動の多さという問題もある。 当然太陽光といえども無料ではない。 また、CO2施用のやりにくさとかヒートポンプの活用術のマスターなどという問題もある。
しかし、植物工場としては、一応完成した技術体系と考えてよかろう。

人工光.JPG

これに対して、人工光型植物工場というのは、蛍光灯やLEDなどの人工光で光合成させるもので、より本格的な工場と言えるかもしれない。 ともかく、太陽光型と異なり、なるべく外部と遮断して、かなり高い建築物の方が生産性が高い。
そして特筆すべきは、この人工光型植物工場というのは日本が開発した技術であり、日本が世界の最先端を走っている。
しかし、オランダ系の太陽光型植物工場は40年間の技術開発で、それなりに高い完成度を誇っている。 これに対して日本の人工光型植物工場は、10ヶ年弱の技術の蓄積しかなく、輸出産業として確立しているわけではない。
2014年の3月時点で、日本には人工光型工場は165ヶ所、太陽光型との併用工場が33ヶ所、太陽光型工場が185ヶ所と、工場数においても太陽光型と肩を並べている程度。
そして、2013年3月時点の調査では、人工光型植物工場で黒字をだしているのがたったの20%。
収支がトントンになった工場は60%で、赤字工場が20%。 
これは、操業を始めたばかりでまだ技術の蓄積がなく、産業としては未熟で、これからの産業だと言う面が強いと解釈すべきだろう。

矢野経済では、2015年の人工光型植物工場の売上高を約130億円と予想している。 そのうち、レタス類の売上を110億円、85%と踏んでいる。
これが、5年後の2020年には売上が300億円と2倍以上になり、レタス類は130億円と20億円しか増加しないのに、機能性野菜や生薬を含む医薬品の売上が170億円と急伸すると予想している。
やはり、一番の問題は、人工光型植物工場用の最適な植物を発見すること。 
消費者が魅力を感じる植物を、無農薬で、年間を通じて一定の価格で提供し、需要を拡大したゆくことが出来るかどうかがカギ。
いや、植物の発見もさることながら、苗種の開発こそが大問題。 
今までの露地栽培の苗種がそのまま使えないのだから、人工光型植物工場用の苗種の開発は、何よりも重要か課題になってくる。
また、トマトなどの果菜類では、育苗は人工光型工場で行い、栽培は太陽光型工場で行うと言う棲み分けも進んできているという。
いずれにしろ、植物工場の比率は、これからますます高まって行き、イノベーションも画期的に進むであろう。 
われわれ建築関係者も、その最も合理的な工場開発の一端を担って行かなければならない。


posted by uno2013 at 13:21| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月20日

空調換気に関する時系列的な系統図と光冷暖に対する疑問と期待 (下)



除加湿機能付きのセントラル空調換気システムを、世界で最初に開発してくれたのがダイキン工業で、18年前の1997年のことだった。
カナダ資源エネルギー省のR-2000住宅研修に参加して理論武装を行い、本格的な顕熱交を開発しただけでなく、冬期は加湿し、夏期は除湿するという意欲的なシステムを開発してくれた。
当時のR-2000住宅のQ値は1.4W程度だったので、空調機は6〜8kWの動力を利用した方がランニングコストは安く上がった。
このほかに、除湿専用の排熱ドライが1台。 つまり、室外機は2台。 
そして、加湿は日本で初めての透湿膜加湿器を開発してくれた。
このシステムの除加湿機能は悪くなく、当初に採用した消費者からは好評だった。 
しかし、透湿膜は水道水を利用していたので次第に電磁弁にカルキが溜まり、日に1回水を入れ替える時に電磁弁が閉まらず、水が垂れ流しになるクレームが連続的に発生した。 このため、10年後には加湿機能はデシカに全面移行して、生産を中止してしまったのは残念。
その電磁弁を改善し、透湿膜のシステムを引き継いでいるのが三菱。

ともかくダイキンは、住宅各社に呼びかけて、大々的に新製品発表会を行ったが、このシステムを本格的に採用したのはハーティホームだけだった。
採用に当たって、まず問題になったのは冷暖房と新鮮空気の吹出口の位置。
セントラル空調換気システムの家に住んだことの無いメーカーの機械屋、電気屋の技術者は、店舗用のスカイエアで馴らされてれているので、平気で窓に近い天井面に吹出口を設けてしまう。
これは、最悪の選択。 
実際に、天井に吹出口を付けて、その下に座って見ると分かる。 これほど不快感に悩まされることはない。 2年前からセントラル空調システムを採用している松井修三氏の 「涼温な家‥‥エアコンの風が嫌いな人へ」 も、同じ間違いを犯している。
冷水修業僧のように、冷気をモロに頭から浴びて、身体も唇もガタガタに‥‥。
一度アメリカで、1階の床から冷気が吹上げている現場に遭遇した。 この下からの冷房方式は最も不快。 つまり空調は、上下から直接人間を狙う方式は絶対的にダメ。

試行錯誤の末に考え出したのが、廊下側の天井に一番近いところから、窓に向かって天井沿いに水平に風を送る方法。 
これだと冷気や暖気は頭の上を通り過ぎてくれるので、ほとんど気にならない。 何よりも優れていたのは、給気ダクトの長さが飛躍的に短くすることが出来たこと。
そして、一番温度的に弱いサッシ面に当って、外気を包んで跳ね返り、アンダーカットされたドアの下部からダーディゾーンへ流れて行ってくれる。 これこそが、冷暖房と気流が気にならないベストな方式。
こんなイロハのイも分からず、人を狙ってエアコンを吹付けることを自慢げにPRしている会社があるのだから、嫌になる。 低開発国の最低のエアコン方式を、最善策だと勘違いしているトップが、いまだに存在しているということ‥‥。

次に考えたのが機械室の位置とダクトの振回し。
機械室は、小屋裏を利用するのがツーバイフォーの常識。 そして、2階に小屋裏と1階の天井を結ぶ3尺角程度のダクトの通路を設ける。
そして、南側は212のIジョイストを用いて、北側の通路と部屋には平行弦トラスを架ける。 この平行弦トラスの採用こそが、ダクト工事を飛躍的に容易にしてくれた。
アメリカの建築現場で、この平行弦トラスを2階床に採用しいるのを目撃。 
それをヒントに、関東ギャングネールに相談したら、204材をギャングネールで絞めるのではなく、204材をネール付きの波型の細い金属板を、両方から挟んで圧縮した平行弦トラスをオーストラリアから輸入してくれた。 世界には、優れた部品が揃っている。 
しかも、北側の2階の床だけだから、コストの負担も軽くて済む。
この、比較的安い平行弦トラスの採用で、ダクト工事は飛躍的に簡単になった。 つまり、浴室やトイレ、床下などのダーディゾーンからの排気ダクトは、そのまま平行弦トラスの中を這わせればいい。 
給気ダクトは、1〜2階の廊下の天井を25p程度下げることで、各室へ簡単に供給出来る。
この平行弦トラス方式は、私どもが考え出した特許ではない。 アメリカやオーストラリアで普及している技術を応用してまでのこと。 したがって、「誰にでも使わせて良いですよ」 と関東ギャングネールに言ったのだが、日本では未だに採用しているメーカーを見かけない。 
日本の空調屋さんと住宅屋さんは、少し不勉強だと言いたくなってくる‥‥。

しかし、風を感じさせないポイントは、空調の風量を最低限に絞ること。
北海道無暖冷房住研のメンバーから、「Q値0.5Wの住宅だと、冬期1kWの暖房機があるだけで十分。 どこのメーカーでも良いから、1kWの空調機を開発してくれないかね‥‥」 と言われたことがある。 
たしかに、内地でもQ値を0.8W程度の性能にすると、0.5回転の換気に若干おまけする程度の空調機1台で十分。 つまり、40坪程度の住宅だと2.5kW程度で十分。 ところが、空調換気メーカーの生産品だと、どうしても4.0kW以上の機種になってしまう。 

さて、ここで2つの重要な問題が浮上してくる。
1つは、今までのように6〜8台のエアコンを使うわけではない。 6〜8台を使っている時は、1台が故障しても何とかやり繰りが出来る。 しかし、これからは空調機が1台の時代。 つまり室外機も1台。 それには、相手が機械物だけに油の状態などをしっかり確かめて、きちんとメンテをしてくれるプロの存在が不可欠に‥‥。
このため、私どもは消費者に働きかけて、あまり役に立っていない指定店を解除して、オリエンタルに切替えてもらった。
もう1つのポイントは、各室への給気量の調整。 
各メーカーとも給気用のチャンバーとか分岐チャンバーを用意しているが、いずれもビル用に開発されたもの。 住宅用の場合は、部屋の大きさとか寒暖に対する体質の違いから、厳密な分配器が絶対的に必要になる。 しかし、そういっては悪いが、日本のメーカーで ミリ単位で風量を調整出来る分配器を備えているのを見たことがない。
その中にあって、オリエンタル冷熱が独自に開発した分配器には、ホレボレとさせられる。 文字通りミリ単位で調節出来、必要な風量と適温湿度を供給してくれる。
したがって、私は今までは 《光冷暖》 の必要性などは、考えたこともなかった。
顕熱交は欧米からの輸入物に頼るしかなくなったが、全熱交のリターンダクト内には光触媒機能を付加しているし、ガスバリア性透湿膜の開発などによって、ダーディゾーンからの24時間排気も完全に確保出来るようになっている。
疑問符がつく形での全熱交は、おかげ様で全然使っていない。

問題は家庭用デシカの価格。
当初、担当部長から 「ビルダーには30万円台で入手出来るようにしたい」 との個人的な意向を聞いていた。 このため、私は家庭用デシカを一生懸命にヨイショした。 
しかし、ダクト工事は別にして、機種だけで100万円強という価格を示されて、私の意欲は急速に萎えてしまった。
私は、今でも光冷暖に300万円以上の予算を投じるのなら、デシカ付きのセントラル空調換気システムの方が優れていると信じている。 
イニシァルコストだけでなく、ランニングコスト的にもその方が安く、今までの体験から、「日本の気象条件にはピッタリで、快適」 と実感している。
しかし、最近は平行弦トラスが入手出来ず、ダクトの施工費が嵩むので、130u前後のセントラル空調換気・デシカ除加湿システム住宅だと280万円程度の資金が必要になってしまう。 
これを240万円以内に収めるには、高価なデシカの採用をやめて、冬期の相対湿度が40%台の三菱の透湿膜システムと、夏期はダイキンのアメニティビルトインの排熱ドライを選ぶしかない。

だがこの考えは、光冷暖をよく知らない人間の寝言かもしれない。
第一、光冷暖の換気システムがどのように考えられているのか‥‥という基本的なことさえ私には不明。
また、1つのアルミラジエーターで、本当に全館空調換気・除加湿が可能なのかどうという技術面も闇の中。
したがって、創建社のK社長と友人のO氏のシステム造りと実績データー報告に、多大な期待を寄せている昨今。


posted by uno2013 at 08:24| Comment(0) | 技術・商品情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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