消費者から、「unoさんのホームページの表紙には、《Q値は0.8〜1.0W、絶対湿度は8〜10c》 と明示してある。 絶対湿度の8〜10cは無理としても、北海道はQ値0.8W、内地は1.0W以上の住宅を2棟以上提供した実績のある業者を厳選してリンク先に掲載して欲しい。 でないと、消費者は間違えて選択してしまう惧れが高い‥‥」 という切実なメールをいただきました。
そのことで、何人かの仲間に相談したところ、「消費者の意見は正直で、正しい。 一条工務店の性能に対抗してゆくには、北海道のQ値は0.8W、内地の1.0Wば絶対不可欠と言える最低条件。 いまどき、R-2000住宅の基準を振り回しているようでは、意識の高い消費者からはハナもひっかけてはもらえない。 正月からリンク先を、思い切って絞るべきだ‥‥」 とのサジェスチョンを貰いました。
このサジェスチョンに基づき、私なりに地場ビルダーの実態を調査したところ、北海道でQ値が0.8W以上の住宅を 2棟以上提供した実績のある地場ビルダーは、札幌を中心に10社余しかありません。 まして、内地でQ値が1.0W以上の住宅を 2棟以上提供した実績を持つ地場ビルダーとなると、これまた数社余に限定されるという実態が浮上。
それにしても、札幌はこの2〜3年で様相を一変させてきている。
何と言っても、札幌市がトップランナー方式を採用し、補助金制度で後押したことが 地場企業に大きなインセンティブを与えている。
札幌の5段階の性能レベルについては、今まで数回に亘って紹介しているが、改めてそのQ値とC
値を紹介すると、下記の通り。
◆トップランナー (Q値0.5W、C値0.5a) ◆ハイレベル (Q値0.7W、C値0.7a)
◆スタンダード (Q値1.0W、C値1.0a) ◆ベーシック (Q値1.3W、C値1.0a)
◆ミニマム (Q値1.6W、C値2.0a)
この5ランク目の ◆ミニマムというのは、北海道における高気密住宅の最低性能基準。 内地の2.7Wというのに比べると1.6Wというのは厳しいようだが、ヨーロッパに比べると大甘の基準。
4ランク目の ◆ベーシックの1.3Wは、R-2000住宅と同等。 この程度の性能で、いまだに商売をしている会社が多いというのが実態。
そして、数年前より新住協が唱え出した「Q1.0 (キュー・ワン) 住宅」。
これが、札幌の基準では、「とおり一遍のスタンダードに過ぎない」 と言い切っているところが、なんとも憎い。
その上に、Q値が0.7Wの◆ハイレベルがあり、さらには、◆Q値が0.5Wの、究極と言えるトップランナーがある。
制度を創るのは比較的簡単。
要は、この厳しい制度をとれだけ地場ビルダーが消化し、武器として活用しているかである。
札幌市の民間側の受け皿として活躍しているのが、私のホームページのリンク先にある北海道無暖冷房住研。 北大・藷熕謳カ、道科大・福島先生をはじめ、熊谷氏、タギ氏など多彩なコンサルタントを持ち、21社の正会員から成っている。
この中で、今年0.7Wのハイレベル以上を34棟をこなした道東ハウス、同じく31棟をこなした大洋ハウスを筆頭に、2棟以上こなしたビルダーの数が、7社にも上る。
上位の10社の数字だけをみても、トップランナーが14棟、ハイレベル63棟、スタンダードに至っては180棟にも及ぶ。 もちろん、全てが補助金を受けているわけではない。
補助金なしでも、それなりに受注している。
この道無暖冷房住研だけで、Q値1.0W以上の住宅の受注数が 300棟近くに及ぼうとしている事実に注目したい。
すなわち、今年の実績数を見ると、R-2000住宅やキュー・ワン住宅の北海道における実績を完全に凌駕していることに気がつく。
つまり、スタンダードというQ-1 (キュー・ワン) 住宅を 数十棟単位で消化している地場ビルダーが、数社もあるということ。 このことの意義は非常に大きい。
私が常に強調していることは、「地場ビルダーが高気密住宅の専門業者化しない限り、地場に高気密住宅が普及することは絶対にあり得ない」 ということ。
たしかに、パッシブハウスという一般社団法人には多くの設計士が参加している。
そのことは非常に良いことで、何一つ否定する必要はない。 しかし、設計士が仕事の依頼を受ける範囲は広く、特定の地場に縛られているわけではない。
伊東豊雄氏や隈研吾氏などに代表される有名な設計事務所は、世界を股にかけて活躍している。
設計事務所というのは、エリアには拘束されない存在。 つまり、所長一人が出張し、受注をとることが可能な商売。
これに対して工事を担当する地場ビルダーは、大工さんをはじめ一切の下職を簡単に移動させることは出来ない。 一定の範囲内で、厳しい基準をクリアーするには、1棟や2棟程度の経験だけでは完全に体得させることは不可能。
仕事に慣れると言うことは、全ての職人が同じ考えで動くということ。 徹底的にシステムを理解し、身体が自然に動かねばならない。 それには、地場ビルダーが専門化して、一定性能の需要をコンスタントに確保しなければならない。
道無暖冷房住研のメンバーの数社が、Q-1 (キュー・ワン) 以上の仕事を、数十棟単位でコンスタントな受注力を確保してきているということ。 そのことの意義を私は称えたい。
こうした地場ビルダーの育成の重要さを、パッシブハウスなどでも学んで欲しい。
でないと、いくら笛を吹いても誰も踊り出せない。
消費者は、安くて安心出来る発注先を、いつまでも見つけ出せない状態が続く‥‥。
さて、札幌の無暖冷房住研の動きを見ていたので、全国的にもこれに近い動きがあるのではないかと考えていた。
しかし、私の判断は、甘かった。
北海道でも、人口の集中が進み、市が中心になって新しい産業を育成しようと補助金まで用意しているのは札幌市だけ。 他の地域では過疎化が進み、予算のない市は補助金事業などは考えられないほどに疲弊。
Q値が1.6Wの省エネ基準を順守しておれば良い方で、206どころか204の充填断熱が未だに幅を効かせているという。 坪単価は、60万円どころか、50万円を割るローコスト住宅が未だにのさばっているとも聞いた。
これは、内地も一緒で、円安で建築資材が高騰しているのに、建築単価は低く抑えられている。
その一方で、鉄骨プレハブやミサワホームなどの性能の悪い住宅が、厚化粧をして高額所得者をたぶらかそうと悪知恵を働かせている。 その動きを支援しょうとしている国交省に経産省。
しかし、ここでも幅を効かせているのがローコスト。 ただし、今までの勢力外で、新しい動きが一部に見られる。
日本には、850万戸もの空き家が存在する。
空き家が多くなったということは、全ての人がまともな家に住めるようになったということで、大変喜ばしいこと。 だが、日本の6,150万戸の既存住宅の質は、相当低いと考えてよい。
6,150万戸のうち、ペアサッシを採用している住宅は1/6の1,100万戸にも満たない。 いまだに寒いアルミサッシの家に住み、冬期は毎朝結露掃除に悩まされている。
そして25年も経つと、一律に建築物の不動産価格を ゼロと評価してしまう日本の不動産屋。 こんな不動産屋は、絶対に信頼できない。
国交省が、プレハブメーカーや全建総連の工務店や大工さんの都合だけを考えて、Q値が2.7Wという惨めな住宅を消費者に押し付けている。
「少なくとも、Q値が1.0W以上の高性能で、暖かくて、毎朝サッシの結露掃除をしなくても良い住宅しか 新設住宅としては認めない」 という毅然たる態度を、国交省が率先して取るべき時期に到達している。
一方で、いままでの地震や火山活動以外で、集中豪雨による土砂災害の被害が急増している。
日本は70%が山林。 そして人口増で、河川氾濫区域に半分の人口が棲んできた。
これから人口の減少が続いてゆく。 ということは、土砂災害の怖れのある地域から、既存の住宅を強制的に移動させるべき。 日本では、やたらに地主の権利というか、わがままを大目で黙認してきた。 その結果が、地震や土砂災害による被害者の増大になってきている。
これを根絶すべき。
その詳細については、新年のこの欄で述べたい。
さて、消費者から強い要望があった 「北海道はQ値が0.8W以上、内地はQ値が1.0W以上の住宅を、2棟以上建てた業者だけをリンクしていただきたい」 というご希望は、先に述べたように北海道では10社余、内地では5社余という淋しいリンク先になってしまう。
2年後には、絶対にそのようにしたいと思う。
しかし、今それを強行すると、やっと育ってきた多くのツーバイフォー業者を追い出すことにもなってしまう。
このため、明らかに業務を停止している業者と、一部大手メーカーだけを省き、この数年来ホームページを更新していない業者を含めて温存することにした。
そして、新規に馬力のある10社余を選んで、新年から追加します。
消費者の方は、そういった事情を賢察の上、発注先を選んで頂きたいとお願いします。